囚人13号

ファントマ対ファントマの囚人13号のレビュー・感想・評価

ファントマ対ファントマ(1914年製作の映画)
4.0
別題『ファントマ/仮面舞踏会』。

これは面白い。何よりも脚本が秀逸で、ノワールというよりミステリー、スリラーに近かったかも。三作目でかなり攻めたトリックが見られたが、本作では直接的にショッキングな映像が冒頭の「血を流す壁」に収められている。扉はその決定的瞬間も映画においては滑稽になってしまうであろう"暴力"を隠すことで、その恐ろしさを倍増させる。
同じくアステア&ロジャース映画ではキスを隠すことによってそのシーンを際立たせているし、『深夜の告白』におけるワイルダーはそれを外開きに作り替えてまでこだわり、緊張感を高めている。そのエキスパートがルビッチであったということは言うまでもないが、始祖はフイヤードかもしれないな。

卿夫人が画面に登場する度に映画は一気に演劇臭くなり、うんざりしてしまうが、仮面舞踏会のシークエンスは当時の映画の到達点だと思う。
増えていく黒衣の男に歓喜する人々とは裏腹に、今にも卒倒しそうになる夫人の誇張された表情と腕の傷…。後半の円形アップは前例があるものの、物語映画についにリンチを組み込んだという点も極めて先駆的だった。ただやっぱり幕切れには文句をつけたくなるかな…。
囚人13号

囚人13号