恒喜さんの映画レビュー・感想・評価

恒喜

恒喜

パラダイス(1984年製作の映画)

5.0

我がベストアニメーションの一つ。同率に『あしたのジョー2』や『ひこうき』のMVなどがあったりしますが、ディズニー的主題から過剰な擬人化が取り除かれ純化された映像美には閉口するほかない。
写真を見て分か
>>続きを読む

死後の世界(アフターライフ)(1978年製作の映画)

4.5

肉親の死が作品へ如何なる影響を及ぼすのか、ソクーロフの『セカンド・サークル』を観たばっかりなので陰惨だったが、アニメーションの特権としてファンタスマゴリアは必然だろうし、パテルの宗教観に起因する円環構>>続きを読む

ビーズゲーム(1977年製作の映画)

3.8

捕食・被食の歴史が文明発達につれて戦争へと姿を変えていくビーズアニメ。進化に比例してスケールが壮大化し、ビーズの丸い輪郭すらも消えた果てに広がる銀河、最後はのび太のあやとり?

独裁者(1940年製作の映画)

4.0

登録忘れ。チャップリンはかなり早い段階で、映画を意欲的に観始めた頃からインターネットに疎く視聴困難と決めつけていたプロパガンダの『公債』と、自粛していた『殺人狂時代』『ニューヨークの王様』『伯爵夫人』>>続きを読む

ライフ・ウィズ・ファーザー(1947年製作の映画)

2.5

宗教の堅苦しさと家父長制を笑うべきなんだろうが日本人には馴染みがなく、ただウィリアム・パウエルのモラハラパパぶりが目に余る。厳格な考えが変わって云々…という展開に感動もなし、信仰心と家族についての映画>>続きを読む

ブラック・ジャック(1996年製作の映画)

3.5

俺的人生ベスト漫画は『あしたのジョー』と『ブラック・ジャック』だが、その媒介者たる出崎統を制覇してないという事実は間違いなく人生の楽しみなので、少しづつ消費していきたいと思う今日この頃。

ただ本作が
>>続きを読む

火垂るの墓(1988年製作の映画)

5.0

無茶苦茶に抉られるが、個人的には敢えてVHSの不穏な画質での鑑賞を推奨したい。マジでもう義務教育にしたほうがいい。

病院代わりになった学校にて清太が節子を元気づけようと鉄棒の前回りをしてみせる瞬間、
>>続きを読む

バーバリー・コースト(1935年製作の映画)

4.0

ホークス版『黄金狂時代』。ゴールド・ラッシュで人々が押し寄せ結果的に土地が開拓されていく過程は確かに西部劇で、暴力=権力という野蛮な治外法権の図も磊落性に傾くことなく常に胸糞を保つ。
マスメディアの掌
>>続きを読む

砂に埋れて(1918年製作の映画)

4.0

構図がずっと流麗。絵画が動き出すオープニングはグリフィスの継承だろうが、馬と同化したようなハリー・ケリーが酒場に突撃し、唄で友を得る磊落性にフォードからしか得られない栄養を享受する。

クライマックス
>>続きを読む

月の寵児たち(1985年製作の映画)

3.8

登録忘れ。マクガフィンの導入とフライシャー話法というバキバキのハリウッド映画で興奮したはず。
物語自体はほとんど記憶にないものの爆死メリエストリックや割られまくる皿/切り取られていく絵画が滑稽で、ブラ
>>続きを読む

殺しのカルテ(1972年製作の映画)

3.0

今はなきsoundbayでdvdを買っていた模様。
中国人医師の冤罪を晴らすべく何故か医者のコバーンがマイク・ハマーになる話だが、売春少女が出てきたかと思えばステロイド野郎とマッサージ店で殺し合ったり
>>続きを読む

キートンのカメラマン(1928年製作の映画)

5.0

クライテリオン盤にて再見。猿の表情まで判別しうる高画質で観られて幸せです。

失敗し嘲られて尚カメラで現実を捉え続け、全身でメタフィクションを肯定してみせるキートン。『第七天国』ばりの階段ギミックやチ
>>続きを読む

スパイクス・ギャング(1974年製作の映画)

5.0

ニューシネマと括られているが問答無用で命が軽視され、ごろつきの死など無視されてしまう西部劇における青春ほど痛々しいものはない。

破滅へ向かうと分かっていながら一瞬を謳歌し、自由とは死から護ってくれる
>>続きを読む

EUREKA ユリイカ(2000年製作の映画)

5.0

全編中断なしで観られたのはこれが初めて。

青山真治はバイク、自転車、バスなど一つの乗り物に数人が乗り合わせる構図を単なる移動手段以上に限りなく言語が不在に近いコミュニティ空間として描いており、本作で
>>続きを読む

WILD LIFE(1997年製作の映画)

3.8

Vシネマ臭い質感をサブスクで観たという環境含め良い体験ができました。

暴力に対して不感症になっている男のハードボイルドを装いつつ即興的な物語は全て撮りたいショットへの口実に過ぎないという尖り具合が好
>>続きを読む

ラスベガスの保安官(1944年製作の映画)

2.5

巨大な本から出てきて撃ちまくったらどっか行っちゃうサイレント映画みたいなオープニング(これで小説の映画化とすぐに分かる)。

殺人事件が勃発してからの冤罪、混乱、陰謀と定石をなぞっているだけだが、西部
>>続きを読む

コロラドの争い(1952年製作の映画)

3.5

製材所建設のため土地の相続権を奪い、森林伐採を目論む姉弟と闘う森を守ろうウエスタン。

よくあるC級だろうと高を括ってたらクライマックスに発砲フィーバーがあるし、男たちが豪雨の中歌いながら堤防をつくっ
>>続きを読む

厳重に監視された列車(1966年製作の映画)

4.2

まだ3本くらいしか観れてないけどメンツェルおもろいなー!愛しの童貞映画。

冴えない主人公の置かれた深刻な社会的立場に対し、映画は彼が個として抱える小さな問題をフォーカスするため世界がちょっと滑稽に映
>>続きを読む

そして光ありき(1989年製作の映画)

4.5

登録忘れ。謎めいた首の縫合と蘇生に映画の奇跡を見る。

ルノワールというよりフラハティを思わせる民族的美学へ次第に介入してくる文明が彼らの生活を脅かし、争いの種であった(この空間には不相応な)タイヤは
>>続きを読む

音楽(2019年製作の映画)

3.7

尖ったYouTuberのような作風が限られたニーズに深くぶっ刺さるタイプ。単調なドラムやリコーダーがロックっぽく響くにつれて映像もオーバードーズしていく『ファンタジア』ばりの才能マジすげえ。
不良の青
>>続きを読む

孤独な場所で(1950年製作の映画)

4.5

グロリア・グレアム100歳おめっと。ニコラス・レイとの因縁もグロテスクだが、内幕のファム・ファタールモノから後半は毛色の異なったDV譚となってしまう構造の出鱈目な説得力、グレープフルーツナイフを簡単に>>続きを読む

涙の船唄(1920年製作の映画)

4.8

三人の男家庭が完成し、原題通り腰の曲がった老人Jack-Knife Manが持っていたナイフも内職から子供へ木彫り玩具を作ってやるための道具となる鮮やかな変奏。

孤独な老人の眼差しが世界へ向けられる
>>続きを読む

喜びなき街(1925年製作の映画)

3.0

クソ画質すぎて死んだ。なんでテレビの明るさをお前に合わせて調整せねばならんのだ!!!

肉の配給に列をつくる貧困層とパーティ/セクハラ三昧の富裕層とを往来する若ガルボ。金銭絡みの殺人事件やらが起こって
>>続きを読む

紅の豚(1992年製作の映画)

4.3

ハヤオの描く戦争体験や反レイシズムは常にファンタジーに内包されるも、頻出する冥界の美しさはこれが一番だと思う。ヒコーキ愛とハードボイルドが豚のネタ具合に全然負けてないのが凄いな。
小学校時代の渾名が紅
>>続きを読む

(2023年製作の映画)

3.8

黒澤らしさはタイトルと『影武者』のラストカットから接続されたようなオープニングだけで、合戦のスペクタクルほか未曾有の登場人物量によって振り子原理の振幅数が落ちている印象。

カメラマンが代わったという
>>続きを読む

平原の待伏せ(1953年製作の映画)

3.7

ジョン・ウェインが3時間かけたアラモ砦の激闘を銃撃と落下を詰め込んだ15分で処理し、唯一助かったグレン・フォードを善悪の狭間で生かし続ける。
戦闘場面のダイナミズムに対し最後は拳で決着がつけられるとい
>>続きを読む

デブのコック(1918年製作の映画)

-

人体の即席ピタゴラ装置。ファッティは数ある女装バリエーションの中でもサロメがお気に入りみたいだが、パロディそのものに世界が飲み込まれていく不条理はマルクス兄弟の趣もある。
キートンとのコンビプレーは実
>>続きを読む

世界拳闘王(1933年製作の映画)

3.7

これは3年前に観たきり。『バーバリー・コースト』を観てエンディングが全く同じだったので思い出したけど、回復しつつあった世界情勢に重なるプレコード期特有の羽振り良さが出てた気がする。

マックス・ベアも
>>続きを読む

ショッカー(1989年製作の映画)

5.0

凄えロック。俺が観たかったのはこれなんだ!もう映画には起きている事象への弁明も根拠も要らないし、ただ過激な画面連鎖に身を委ねられればそれでいい。

全ての電化装置が敵になるなら母体から破壊してしまおう
>>続きを読む

アタラント号(1934年製作の映画)

5.0

再見。映画史のラディゲ、メロドラマのベスト・オブ・ベスト。
片方のジャンが煌めく水面に不潔な放浪者を浮かべてみせた史実と呼応するが如く、ヴィゴも水面へ夫婦と入墨まみれのミシェル・シモンを押し込んだ船を
>>続きを読む

新学期・操行ゼロ(1933年製作の映画)

5.0

少年たちの中に潜む反骨心と詩的な映像美の間に生じた偏差によって映画が唄となる。

スローモーションの境地もこの先で唯一フェリーニが指先で触れたくらい、羽毛舞う美しさ一つとってもチャップリン/クルーゾー
>>続きを読む

悪魔のような女(1955年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

クルーゾーって絶対変態すよね。『情婦マノン』はほぼ屍姦映画だし、『恐怖の報酬』も正直冒頭がエロすぎて大爆発シーンまで頭がボーッとしてるし本作はもう確信犯だし。

しかしホラーめいたドラマツルギーに二段
>>続きを読む

拳銃の報酬(1959年製作の映画)

4.8

ただもう面白すぎるから面白いとしか言えん。

借金、強盗計画、ファム・ファタール全部のせ映画こと『アスファルト・ジャングル』へ更に人種問題を絡めた96分。
何らかの証言を拒み法廷侮辱罪で服役していた男
>>続きを読む

秘められた過去/Mr.アーカディン(1955年製作の映画)

4.0

ウェルズ自身の存在が大いなるサスペンスとして機能し、マイケル・レッドグレイヴの主観以外でも仰角を保つカメラによって観客は常に見下されている。
構造的には『市民ケーン』よろしく死に際に放たれた一言の探求
>>続きを読む

ファッティとキートンのアウト・ウェスト(1918年製作の映画)

3.8

キートンが凶暴すぎて笑った。
銃弾や矢が尻に命中すれどリアクション芸にしかならないファッティに対し、一般人が食らうと即死する鬼畜世界。マジで意味わからんくらい突然黒人を虐めまくるかと思えばT-1000
>>続きを読む

ビッグ・ハウス(1930年製作の映画)

3.5

ジョージ・ヒル監督&フランシス・マリオン女史の夫婦タッグ。
最初期のムショもので、まぁやってることは脱獄計画や警察スパイやらだが激強坊主のビアリーをもう少し見たかった。ここから更に囚人側に歩み寄ると『
>>続きを読む

>|