歪み真珠

岬の兄妹の歪み真珠のレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
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海のにおいがするセックス。
はじめてのセックスは海のにおい。
突然の詩に面喰らう。あなたのはじめてのセックスはどんなにおいがしましたか?

フォローしている方が絶賛されていたので見ました。ありがとうございます。

海辺でプリンを食べる姿、セックスをした男の子とうんこのついた手で握手をする姿、「でもちんこ大人」って言って笑いあう姿、なんか、生きるってこうだよなと。生きるってこうなんだよな、と。
そこには未来も過去も、苦しい生活もなくて、ただその一瞬だけがあった 余白の瞬間。その一瞬は確かに永遠なんだろうと思った。
小学生のころ大好きで、何度も何度も読んだ本に「その瞬間はさ、永遠なんだよ」と妖精が語る場面があって、ずっとずっとその意味がわからなくて、ずっとずっと覚えてた。(「大きな童話物語」) それがさ、この映画を見てやっと繋がった。確かに、あの瞬間は永遠だ。
そんな描きかたに、あっいいなと思った。二人のそばにはすぐ隣に死があった。でもその未来と過去と苦しい生活とが交わらない純粋な「一瞬」がたくさんあって、だから生きてるんだ。こんな一瞬を積み重ねていきたい。

地方の都市の、決して豊かではない街に住む二人。段ボールを引きちぎったそこから部屋に射し込む真っ白な光は笑っちゃうほど眩しかった。
二人の生活や、体や心に少しほつれのある人とのそういう行為は悲惨なんだか可笑しいんだかわからなくなってきて、誰かの人生を評価することなんて全くナンセンスなんだと。おまえはおまえの余白の瞬間を積み重ねて生きろと。そんなことを感じた。

足を引きずりながら、歩くお兄ちゃんの姿は生そのもののようで、種田山頭火の「歩きつづける 彼岸花 咲きつづける」という俳句を思い出す。

感想を書くのは難しかった。だって生きるって、どういうことかわからないでしょ。でも、私の生は、その余白の瞬間を積み重ねて生きてゆきたい。