櫻イミト

太陽は光り輝くの櫻イミトのレビュー・感想・評価

太陽は光り輝く(1953年製作の映画)
4.0
「怒りの葡萄」(1940)「わが谷は緑なりき」(1941)「静かなる男」(1952)など、アカデミー賞監督賞を史上最多の4回受賞しているジョン・フォード監督の隠れた傑作。日本ではATG配給で1966年に公開。

冒頭からフライドチキンCMで馴染みの「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム」の曲が流れる。舞台は南北戦争から40年たった南部ケンタッキー州の小さな町。敗北した南軍の元ラッパ手である初老判事プリーストと仲間たちはいまだに南軍魂を持ち続けて暮らしていた。そんな空気を一新しようと北軍出身のメイドウ弁護士が来たる判事選に対立候補として出馬する。一方、プリースト判事には頭を悩ませている問題がある。それは友人レイク医師の養女ルーシーの行く末である。実は老将軍の孫娘なのだが、その事実は隠されている。というのも母親は娼婦だったうえ父である老将軍の息子は母親を巡るトラブルでならず者から殺されていたのだ。そんな中、名士の家の青年アシュビーが久しぶりに帰郷。ルーシーに惹かれていく。。。

と、導入30分は人間関係の説明で話がとっ散らかるが、そのあと話が転がり始めて面白くなる。終盤、教会で葬式を挙げられない娼婦たちがプリースト判事の指導のもと葬列を作り黒人の小さな教会へ向かう。町民の好奇の眼と嘲笑をよそに、プリーストの仲間、ルーシーとアシュビーが列に加わり、次第に大きな列になっていく様は久々に映画で感涙した。

アメリカ南部といえば黒人差別が根強く悪い印象で描かれる映画ばかり見てきたが、一方で“古き良き田舎”というイメージも強いことを本作で初めて知った。アメリカ人の中での南軍と北軍に対する心情を学べばさらに理解できると思うが、それがわからなくても、疎外された娼婦や黒人の気持ちを尊重する善なる意志には十分に感動させられた。
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