櫻イミトさんの映画レビュー・感想・評価

櫻イミト

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死霊アスフィックス(1972年製作の映画)

3.6

イギリス製レトロSFホラーの隠れた秀作。不死の秘密を突き止めた科学者の運命を描く。撮影は「アラビアのロレンス」(1962)など3度オスカー受賞した巨匠フレディ・ヤング。映画カメラマン出身ピーター・ニュ>>続きを読む

シェークスピア連続殺人!!血と復讐の舞台(1973年製作の映画)

4.4

ホラーの名優ヴィンセント・プライスが自らの全出演作の中で最高傑作とした一本。舞台俳優が自分を酷評した批評家たちをシェイクスピア劇の殺人場面を再現しながら手にかけていくブラックコメディホラー。原題「Th>>続きを読む

パリの連続殺人(1966年製作の映画)

3.5

クリストファー・リー出演。英ミステリーホラーのカルト作。1962年まで実在したパリのグランギニョール劇場をモデルに吸血連続殺人事件を描く。撮影は「博士の異常な愛情」(1964)「フレンジー」(1972>>続きを読む

ゼイ・ウォント・フォーゲット(1937年製作の映画)

4.0

マーヴィン・ルロイ監督による社会派映画の隠れた傑作。被疑者が暴徒によりリンチ殺害されたレオ・フランク事件(1913)を基に、アメリカの南北対立と偏見の要素を加えて脚色。脚本は後に「オール・ザ・キングス>>続きを読む

Abschied(原題)(1930年製作の映画)

3.5

フィルムノワールの巨匠ロバート・シオドマク監督(当時29歳)の初単独長編。ドイツUFA社の初トーキー作品。原題の意味は「Abschied(さよなら)」。若い恋人の悲恋物語。脚本は後に「赤い靴」(194>>続きを読む

襤褸の旗(1974年製作の映画)

3.8

日本で最初の公害と言われた足尾銅山・鉱毒事件の告発に一生を捧げた明治時代の政治家、田中正造の伝記映画。主演・三國連太郎。助演に映画初出演の西田敏行(当時26歳)。吉村公三郎監督の最後の映画。三里塚芝山>>続きを読む

スティグマータ/聖痕(1999年製作の映画)

3.6

1945年にエジプトで発掘され“二十世紀最大の考古学的発見”と呼ばれた古代キリスト教文書「トマス福音書」をモチーフとする知的宗教ホラー。主演は「6才のボクが、大人になるまで」(2014)のパトリシア・>>続きを読む

洗礼(1996年製作の映画)

3.4

楳図かずおの傑作漫画「洗礼」(1976)の実写映画化。脚色と特殊造形を兼任した吉原健一監督については、他に「爆! BAKU」(1992)を監督したこと以外は詳細不明。

ビジュアルはかなり良い。主演の
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帝都大戦(1989年製作の映画)

3.0

荒俣宏「帝都物語」40周年の記念に鑑賞。

実写版「帝都物語」(1988)の翌年に作られた続編。名映画プロデューサーである一瀬隆重の唯一の監督作。特殊造形スクリーミング・マッド・ジョージ。原作は「帝都
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帝都物語 第四部 菩薩篇(1991年製作の映画)

3.6

アニメ版の最終部。學天則も登場し実写版の終盤と同じ筋道だが、クライマックスの加藤vs景子のシナリオ演出はこちらアニメ版の方が遥かに盛り上がって面白い。落としどころの菩薩化も巧く表現されて鑑賞後の満足感>>続きを読む

帝都物語 第三部 龍動篇(1991年製作の映画)

3.5

ついに正義の主人公、目方恵子が登場し一気に面白くなる。今更気付いたのだが、本作は帝都を巡る霊的な戦いを描いているのに、都の中心で神々を祀る天皇の存在に触れていない。物語の中心にいながら意志がハッキリし>>続きを読む

帝都物語 第二部 震災篇(1991年製作の映画)

3.4

早くも平将門の末裔である辰宮由佳理が闇落ち。兄の辰宮洋一郎は性格の悪い男として描かれ主役不在が続き、魔人・加藤保憲の強さばかりが際立つ。

浅草十二階がある大正の東京風景は魅力的。ラストでやっと将門が
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帝都物語 第一部 魔都篇(1991年製作の映画)

3.3

荒俣宏「帝都物語」40周年の記念にアニメ化作品を鑑賞。45分×4部。

シリーズ監督りんたろうの最新インタビューによると、実質的にはキャラクターデザイン担当の摩砂雪(当時ガイナックス)を中心とした特別
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日本残酷物語(1963年製作の映画)

3.5

中川信夫、小森白らが共同監督した日本のモンド映画。前年の「世界残酷物語」(1962)にインスパイアされ、「新東宝」倒産後の後継「新東宝興業株式会社」が第一回製作配給。ナレーション宮田輝。

生き猿の脳
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歩道の三人女(1932年製作の映画)

3.5

ルロイ監督の「仮面の米国」(1932)の同年前作。同級生の女性3人の小学生時代~成人後までの13年間を追う人間ドラマ。主演は「スカー・フェイス」(1932)の助演女優アン・ドヴォラック。原題「Thre>>続きを読む

ヒズ・ガール・フライデー(1940年製作の映画)

3.3

名脚本家ベン・ヘクト&チャールズ・マッカーサーの代表戯曲「フロント・ページ」(1928)の二度目の映画化。新聞記者が主役の社会風刺喜劇。

おおまかなプロットは同戯曲の初映画化「犯罪都市」(1931)
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犯罪都市(1931年製作の映画)

3.0

「嵐が丘」(1939)などの名脚本家ベン・ヘクト&チャールズ・マッカーサーの代表戯曲「フロント・ページ」(1928)の初映画化。新聞記者が主役の社会風刺喜劇。

シカゴの警察本部ではアールという男が“
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特輯社会面(1931年製作の映画)

4.0

「犯罪王リコ」(1930)で大ブレイクしたE・G・ロビンソン×マーヴィン・ルロイ監督のタッグが次に放った隠れた傑作。新聞報道のモラル告発映画の先駆作。名助演女優アリーン・マクマホンの映画デビュー作。原>>続きを読む

ゴールド・ディガース(1933年製作の映画)

3.4

ブロードウエイの大ヒットミュージカルの映画化。ミュージカル場面のスタッフは「42番街」(1933)と同じく、振付バスビー・バークレー、作曲ハリー・ウォーレン、作詞アル・デュビン。1933年の全米興収2>>続きを読む

風雲児アドヴァース(1936年製作の映画)

2.5

マーヴィン・ルロイ監督による壮大な歴史文芸ドラマ。原作は米作家ハーヴェイ・アレンのベストセラー「アンソニー・アドヴァース」(1933)。アカデミー賞4部門受賞。

18世紀イタリア。中年侯爵ドン・ルイ
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世界は還る(1933年製作の映画)

3.5

マーヴィン・ルロイ監督が「仮面の米国」(1932)の翌年に手掛けた隠れた秀作。開拓民の家に生まれ“牛肉王”に成り上がった男の70余年の一生を通してアメリカ近代史を映し出す人間ドラマ。主演と脚本は「科学>>続きを読む

くみかえの日(2003年製作の映画)

2.8

「ハケンアニメ!」(2022)の吉野耕平監督の自主制作短編三作目。PFF2004入選作。

年に一度の「くみかえの日」。それはマンションが一戸ごとに切り離されて空を飛び、住居が強制的に入れ替わる日のこ
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水路の兄弟(2002年製作の映画)

3.5

「ハケンアニメ!」(2022)の吉野耕平監督の自主制作短編二作目。PFF2002入選作。

排水溝の水路で暮らす兄。しばらく前に地上に出た弟が久しぶりに戻ってきたので一緒に魚釣りに出かける。。。

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夜の話(2000年製作の映画)

3.3

PFF審査員特別賞受賞。「ハケンアニメ!」(2022)の吉野耕平監督が学生時代に撮った初短編。

夜。街を歩く男は、不思議な機械を宙に向ける白衣の二人組に出会う。彼らは「夜を計測している」と語り、彼ら
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クロールスペース(1986年製作の映画)

3.0

クラウス・キンスキー主演の「屋根裏の散歩者」風スラッシャーホラー。脚本・監督 は「パペット・マスター」(1989)のデヴィッド・シュモラー。

美人だけにアパートの部屋を貸す大家のガンサー(クラウス・
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Fatima(原題)(2020年製作の映画)

3.3

1917年に起きた“ファティマの奇蹟”を地元ポルトガルで映画化。

※あらすじは「ファティマの奇蹟」(1952)のレビューに記述。
※付加要素
①ハーヴェイ・カイテル演ずる無神論者の教授が80歳を超え
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ファティマの奇蹟(1952年製作の映画)

3.5

1917年ポルトガル・ファティマ村で7万人が体験した “マリア出現の奇蹟(ヴァチカン公認)”の初映画化。監督は「謎の下宿人」(1944)のジョン・ブラーム。音楽は「風と共に去りぬ」(1939)の巨匠マ>>続きを読む

ミスター・サルドニクス(1961年製作の映画)

3.6

1960年前後に“観客参加型ギミック付きホラー映画”で一世を風靡したウイリアム・キャッスル監督の代表作のひとつ。本作のギミックは、2種類あるラストシーンのどちらかを観客の多数決で決めるという仕掛け。※>>続きを読む

女奴隷船(1960年製作の映画)

2.5

太平洋戦争末期。マレーから秘密書類を運ぶ須川中尉(菅原文太)を乗せた輸送機が撃墜され海に墜落。須川はクイーン(三原葉子)が仕切る貨物船に救われる。その船は、日本の女性を上海で売り渡す女奴隷船「お唐さん>>続きを読む

七月の雨/夕立ち(1967年製作の映画)

3.7

マルレン・フツィエフ監督の「私は20歳」(1965公開)の次作。ロシア・ニューウエーブ時代(雪解け時代)の終わりを予感させる女性実存映画。原題「Июльский дождь(7月の雨)」。

1966
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私はモスクワを歩く(1964年製作の映画)

4.5

1960年代ロシア・ニューウエーブ期の伝説的青春映画。監督は後に「不思議惑星キン・ザ・ザ」(1986)を手掛けるゲオルギー・ダネリア。撮影は「惑星ソラリス」(1972)などタルコフスキー監督と連作する>>続きを読む

私は20歳(1965年製作の映画)

4.5

1960年代ロシア・ニューウエーブの金字塔と称される一本。ロシアがスターリン主義から脱した雪解け時代の青春映画。マルレン・フツィエフ監督はアンドレイ・タルコフスキー、アンドレイ・コンチャロフの全ロシア>>続きを読む

殺人者は我々の中にいる(1946年製作の映画)

3.5

戦後初のドイツ長編映画。“ドイツ瓦礫映画”の代表作。

終戦直後、瓦礫となったベルリン。強制収容所を生き延びた写真家のズザンネは自分のアパートに戻ってきたが、部屋には戦場から戻ってきた若い医師メルテン
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異端者の家(2024年製作の映画)

4.0

A24の脱出サイコホラー。監督・脚本は「クワイエット・プレイス」(2018)の脚本を手掛けたスコット・ベック×ブライアン・ウッズ。撮影は「オールド・ボーイ」(2003)のチョン・ジョンフン。原題「He>>続きを読む

サンダーボルツ*(2024年製作の映画)

3.4

MCU久々のヒーロー集合作品。先行上映での評判が良かったので期待して鑑賞。

マルチバース設定が無かったぶん最近のMCU作の中では一番良かった。「問題を先送りしても問題は解決しない」という象徴的な台詞
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小さい逃亡者(1966年製作の映画)

3.8

衣笠貞之助監督の最後の劇場映画(共同監督)。史上初の日本とソ連の合作。日本側スタッフは撮影に宮川一夫、脚本に「生きる」(1952)など黒沢明監督の常連・小国英雄。主演は同年の「ウルトラマン」(1966>>続きを読む