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ミステリーロード2/悪徳の街のgeminidoorsのレビュー・感想・評価

4.4
どんなジャンルの芸術につけても、又はどんな仕事、どんな事柄につけ、二番手は悩ましい。音源でたとえるなら2nd.でも花開かすのは難しい。ましてや1st.が良ければ良いほどに。

本作、絵の切り方やアングルも、UPと引きの入れ方も、役者各々の台詞の少なさやコトバの選び方も、全てが説明的ではない処が非常に品位を高めていたと思う。着飾ったりや血筋やの其れではなく、映画という魔法の品位。またしてもワタシの大好きな"ザBの上"だ。

但し1作目2作目通して対訳がデタラメ過ぎて辟易。重要なシーンでさえ勝手にすり替えられたりでは意味迄変わってしまう。(例えばー"だからオマエはとっくに死んでいたのさ"と直訳すれば良いところを"今も地獄だろ"ーコレでは誰が読んでも解釈はまるで異なってしまう)
対訳が正しければ作品の内容がもう1段階深みを増すケースは実に多いと思う。本作も例に漏れず。(ギャラ問題だけじゃあない筈だ。)
あと副題がダサ過ぎではないか?


さて具体的な話題としては…
ブロンドのカツラがバレバレの化け物みたいな女市長、賄賂やり取りに肉体関係まで惰性で保ってきたと思われる採掘会社の現地代表、二人が逃げ切った点は逆にリアル。具体的にもっと上の層は誰も出てもこないし。
"土埃と蝿ばかりの荒地"には姿さえ表さない。
終局に向かい主人公のライフルの照準が合ってきて、レンズ内に視えた若い刑事の立ち位置。この展開はワタシ好みど真ん中!
そして会話無しでタッグを組む流れ。
戻って中盤"悪や汚にまみれても、私達は其所で生きるしかない"とヒール側は云うに対して、その社会構図は変えられないかも知れないーという現実的な話。
しかし終局で過去を顧みた若い刑事は"自分は自分らしい道をゆくしかない…"と主人公に呟く。
映画内ココだけ台詞で語ってしまう場面だが、若い警官の肩をしっかり優しく黙って叩いて別れてゆく主人公の演技がコレまた上手い。前作品ともに彼は大袈裟でなく上手い演技だと感服しきりだ。

ほか前半で(濡れ場は映さないが)端役の娼婦への聞き込みでまんざらでもない空気感の中、娼婦からの"家族はいるの?"と問われ主人公はサラッと答える。"妻とは別れた"
"美しい娘が居た。"
"しかし昨年死んだ。"
それは決して本作で詳しくは語られはしない。
が、前作の流れを考えたらば、一度解体した家族は再構築へ向かった筈だから、妻とは2回目の別れをして来て現在があるのだろう。娘は父親の捜査を恨む輩達に殺されたのだろうか?父が五人殺した仕返しに…
だから本作の冒頭から主人公はアルコール漬けだったのだろうと思ったりした。

土地引き渡しの条約サインに於いて拒んだアボリジニが、中庸位置の賄賂を貰っていたアボリジニに殺される展開が何とも悲しく。
けれども殺されたアボリジニのお爺さんの生前のコトバ一つ一つ、例えば鳥についてや、例えば白人の神である金("かね"ではなく"きん")や、それらの鍵というか魔法が画面で韻を踏み、この映画に重要な精神性をもたらしていたと思う。
それは原住民族と支配者や移住者との関係を対極に描く話に於いては"ありがちな構図"でもあろう。
しかしこの"ありがちな構図"をどう描くか、どう表現するかで、作品の深みは大きく変わってくる。それが味わいと成るのだろう。

派手な脚本、激しい展開、珍しい話題、…そんな映画や小説も時には楽しい。しかし逆に本作の様な(何処かは創作ならではのご都合主義があっても)どちらかと云えば静かで、硬質で、乾いた作品も善かですたい!
実は映画好きが結集し、現地の歴史や現状からしか産まれない何かを"気概保って創り上げた代物"だと感じられて…一言で嬉しい。


ワタシ達の毎日の日々、何にしたって見方を変えれば"ありがちな"手順の中、"ありがちな"行いの繰り返しばっかりだとも言えよう。

"ありがちな"中で、しかしどうするのか、はたまたしないのか…

観ながらワタシも乾いた土埃に撒かれながら前作以上に感じていた。
静かで熱い何かを。
あっ、また土埃が〜!
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