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METライブビューイング2018-19 ヴェルディ「アイーダ」のaのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

前に書いたレビューが違うプロダクションのページだったのでやり直す。

まず、MET史上でも有数の大規模なセットがすごい。壮麗な柱や彫像が劇場の高さと奥行きを存分に使って建てられている。特に2幕で軍隊たちが100人以上舞台上に直立している様は圧巻。また、4幕で地上の神殿と地下の霊廟が高さを半分ずつ占めているのも贅沢。

アムネリスを演じたアニータ・ラチヴェリシュヴィリは声量がすごい。アムネリスが悪女ではなく、恋に苦しむ普通の女性に見えるように意識していると言う。たしかにラムダスの心がアイーダの元にあると知ってからしばらくはときどき暴言が出るし、何が何でもラムダスを自分のものにしないと気が済まない感じはするのだが、自分の嫉妬心のせいでラムダスが死刑になり、永遠に自分のものにはならなくなってしまってからは自らの過ちを見つめ、司祭たちの私欲を糾弾する様がかっこよかった。

アイーダを演じるアンナ・ネトレプコは、とにかくソプラノの美声が心地よい。アイーダは最初から最後の方までずっと自らの不幸を嘆き、アムネリスやエジプト国王、実の父親に慈悲を請いてばかりいる。そのいつも悲しみに満ちた憂いを帯びた雰囲気がまた魅力的でもあるのだが、少し物足りなくも感じていた。しかし自分とラムダスの幸福の未来のため、そして愛する故郷に再び帰りたいという強い意志から、意を決してラムダスを翻弄し、欺く様はそれまでとは一転して力強かった。また、先を予測して墓地に潜り込み、固く閉じられた石の壁に囲まれながらも「天の扉は開いている」と何度も唱える姿にも信仰心や愛の決意の強さが感じられてよかった。

この2人は別の作品でも共演していたようなのだが、恐らくコロナ禍の無料配信でわたしが途中まで見てリタイアしてしまったやつだ。そちらも三角関係もので、舞台はヨーロッパの壮麗な感じだっと思う。機会があったら再チャレンジしてみたい。

アレクサンドルス・アントネンコ演じるラムダスは、個人的にはキャラクター自体があまりタイプではないのでそこまで興味を持たなかったが、冒頭で「愛するアイーダを陽のすぐそばまで高く女王として崇めたい」みたいなことを言っていたのが、結末では地下の霊廟に閉じ込められることになっているのが面白いと感じた。地下の霊廟から、魂が開いた天の扉を通って愛を成就させるという感じなのかな。アイーダにエジプトは忘れてと言われても「2人の愛が芽生えた場所だ!忘れられない」と言い返し、アイーダに作戦の秘密を漏らしてしまったときには「俺の名誉が…!」と嘆いているところは、どっちつかずではっきりしろと思ってしまったが、恐らくこのような葛藤を描くことこそに意味があるのだろう。

クイン・ケルシーはアイーダの父親のエチオピア王を演じていた。 個人的にエジプト王がめちゃくちゃ素敵だと感じたので、その対比として非常に効果的にキャラを引き立たせていたように思う。アイーダにラムダスをそそのかせと命令しているところの目つきがゾワっとする感じで、アイーダのことを本当に愛しているのか、ただ利用しているだけなのかちょっと疑ってしまうような感じだった。

そしてエジプト王のライアン・スピード・グリーン。ブルーのアイシャドウもファラオの衣装や帽子もめちゃくちゃ似合っていて、立ち姿からして立派で舞台映えするタイプだった。何より、バリトン?の声がめちゃくちゃ美声。インタビューの地声からして美声。舞台では堂々としていて、アイーダとアモナズロの哀願に心を揺らす様子が心根の真っ直ぐさも示しているようだった。3幕、4幕では登場しなかったのがもったいないくらい。

実は1幕は途中から睡魔に負けてしまったので、ほとんど記憶がないのだが、2幕からは楽しく鑑賞することができたのでそれなりに満足。
大掛かりなセットのスケールは凄いんだけど、個人的な好みの世界観とは少し異なるような気もしたので、椿姫に期待したい。
あと、オペラの歴史や見方についてもぼちぼち勉強していきたい。
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