ニシサコ

グリーンブックのニシサコのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.0
マハーシャラ・アリがとにかく人が良さそうで好き。

映画のタイトルが出た瞬間に母が横から「緑の本っ」と戸田奈津子もびっくりの直訳翻訳を小声で言ってきましたが、とりあえずスルーさせてもらい、すぐに映画が始まりました。

いろいろ核心を突かれる映画でした。

私は完全にトニーリップ側だなと。
義理堅さや、純粋さを持つトニーリップに共感をしました。
純粋な心ってのは厄介なもんで、言葉は良いふうに感じるけど、悪い面として出ることもある。私はすこぶるこれに悩まされてるわけです。トニーは時代に合わせて柔軟に生きているわけなんですが、黒人の存在が少なくも認められている様に見えるその時代で、数少ない黒人を見て彼らをひとまとめに固定観念を知らぬ間に押し付けてしまう。
犬なんだから骨が好きでしょってもんです。
でもそれを気付かさせてくれる存在っていうのはなかなかいなくて、逆に言えば受け入れる心のない人もいるわけです。

人の心を動かすのがどれだけ難しいか。
どちらかが拒否すれば絶対にトニーとドクのような関係は築けないわけですよね。

ただ、私はその当時の社会から疎外される黒人の辛さはイジメすら受けたことの無い人間なので、考え思うことしか出来ないんです。そこでさらに人との距離を感じました。

今回は地位のある黒人という所がキーワードの様に思いましたが、今まで見てきた映画では見たことがなく、新鮮でした。
ヘアスプレーでは、差別はあれど同じ境遇にある黒人たちで集まり楽しく踊ったりと、できる範囲で楽しむ人達がいました。

本作では悲しさを分かち合う同士とも距離をつくり、上流階級の白人とも上辺をすごす孤独な人間だったことが、より、感慨深くさせました。
時代を変えるため、一人の人間として認められる為に、静かに耐える。その一方でトニーは感情的になる。お互い極端でこれがだんだんと調和されていくんやから凄い。

素晴らしくバランスのとれたパートナーやなって。この時代に必要不可欠な存在だったということは確実に感じました。

印象的なシーンは
車が故障し停車した前に奴隷として働く黒人のいる農場があり、トニーが故障を直している間、ドクは車から出てしばらく立っている。
この時のドクは緊張しているように見えました。黒人たちは不思議に思ったはず、彼は黒人なのに白人を仕えていて、白人になろうと背伸びしてる訳でもなく、普通にしているから。普通というと語弊がありそうですが。

あとは、雪の中パトカーに止められたが、無意味に檻に入れられることも無く、親切にされたシーン。時代が変わった瞬間を目の当たりにしたような気分でした。劇場内にいる人達がみんなホッとしたはず。
嬉しくなりました。

これを見て母は「いい勉強になったね」と言いました。
私は映画で学ぶことは多いですが、こういった感情のやり取りが多い作品を見ると私は自分の人間関係を見直します。
勉強どころではないんですよね。
脳内で自己反省会を開く程なんですから。
と思いながら、母の言葉をまた、スルーしました。

最後に、全体的に清々しくテンポがよかったです。
見やすく共感しやすい。
私は当たり前になりがちな生活シーンに涙するタイプなのでほんと刺さった。

トニー役のヴィゴモーテンセンたまらなく魅力的ですね。
マハーシャラ・アリはこの手の作品には不可欠となってきた。
人間味のある演技ができるってすごいよねぇ?人間なのにね~ある意味野生的というか。役に偽りのない感じがたまらんです。

語彙力ないからようわからんかも知れんけど、備忘録なので、私がわかりゃそれでええ。最後まで読んでくれた方は結果沢山考えたんだな~と思ってくれたらそれでええ。ありがとうございます。
これ、サントラないかな。

アカデミー賞受賞文句なしの作品でした。
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