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ドンバスの文字のレビュー・感想・評価

ドンバス(2018年製作の映画)
4.8
映し出される映像は、おそらく現在進行形で起きていることに非常に近いのだろう。ただなぜかマチエールが感じられない。でもこれこそがロズニツァが表現したかったことなのだろうか。笑えはしなかったが、この映像はコメディであった。「方向のさだまらぬ魂の状態を描く試み」のようにも見れるし、その分析こそ求められているだろう。
差し迫った危機というよりかは、もうすでにすぐそばにあるものとして、実時間としてあり、日常に融解しているようにも見える。少なくともその表層は。界面に在られる。剰え彼らの日常に起きている(あるいは、起きていた)ことはきわめてグロテスクなのだが、彼らの振る舞いには(笑えはしないが)どこか滑稽で馬鹿馬鹿しささえ感じる。ともすればこの人間の機制の方がグロテスクなのかもしれない。有り体に言えば「例外状態の常態化」とでも表現し得るのかもしれないが、躁と鬱が恒常的に併存している様は祝祭的ですらある。
クンデラなら笑うだろうか。
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