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ジョーカーのlmlのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.2
仮面をつけてピエロになってデモや暴動を起こす人はアーサーの本当の友人じゃない。
もし証券マンを殺さず、ジョーカーにもならず、平凡で高次機能障害のアーサーとデモ参加者が隣人として知り合って、誰か友人になってくれる人はいただろうか。
弱者の母親によって引き取られ、守ってもらえず、障害を負いながらヤングケアラーとして歳を取り、思わぬ形で引き金を引いてしまった。

コロナ禍でNYなどの首都州で福祉が圧迫され、精神障害の患者が受け入れ先もないまま追い出されるように退院させられ、路上でアジア人に怪我を負わせる事件が続いた。
カウンセリングを打ち切りにされ、病院の事務員に正しい対応を取られても暴力で返すことしかできないアーサーを見てると類似点を感じる。
この映画をみて、自分をアーサーだと思う人も、映画の中のデモ参加者にも必要なのは、社会的な手助けと行政のセーフティネット、そして寛容と理解だと思う。

今の日本はどちらかと言うと、自分はまさしくアーサーだと言い、しかし内実弱者に冷たいウェインの父親の様な人が増えているように思える。
そして番組司会者の様に無意識に人を踏みつけ加害を自覚しない。
“善良”で“無害”で冷徹な自称被害者にこの映画に共感する資格はないのではないか。
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