Arima

ジョーカーのArimaのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.5
逆恨み系映画なのに奥行きが深い!

何が凄いって、映画1本まるまるっと
"俺を受け容れぬ者は全て悪"というジョーカーの価値観1点突破である事。
そして、制作側がその価値観に完全に加担している事。

作品に映る映像はジョーカーを通して見える世界を映しているようだ。バイアスってやつ。
故に、ジョーカーを貶めたり、拒否する者は徹底的に悪者として描く。そして、悪者は尽く命を落とす。

例外があるとすれば、シングルマザーの存在だ。
このキャラクターのお陰で、作品全体がジョーカーの視点で構築された世界だと明確に解ったし、同時にジョーカーの哀しみの深さを知った。

最後にこの女性がジョーカーを見た顔は受容とは言い難い表情だったが、殺されたのか?
小人症の同僚は親切だったと救われたが。
しかし、シングルマザーはジョーカーの大切な存在に昇華していた為、拒否られると反動が大きく働きそうだし...。
想像する余地の残し方が絶妙だ。

ジョーカーの笑いとコメディの関係も興味深い。
コメディを観て笑うのが好きで自分もコメディアンを志すが、病気から来る自身の笑いは世間一般の笑いのツボとはズレている。
そのせいで、誰よりも笑いが好きで笑う回数も多いのに、人を笑わせる事が出来ず笑われる事しか出来ない。
哀しい...。でも、世間とのズレってみんな抱えて生きてるものでもあるのよな。

ジョーカーの頭の最後の引き金を引くコメディキングとしてデニーロ持ってきたのはあざとい様だが、結果的にバチッとはまってた。

コメディ、笑いをやる人間は客を元気にしてるだの、マイナスな出来事を笑いに変えてるだの言いたがるけど、その裏には必ず貶められる人間いるのよな。
というか、笑いに限らず何か言葉を発する時点で誰かを傷付けたりするのよな。
それを自覚的でありたい。

しかし、監督のトッド・フィリップス。
GGアリンの映画撮ったり、このジョーカーといい、反体制の意識強い人なんかね。
次回作以降に期待感ありつつ、ちょっと恐怖も感じる。
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