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ジョーカーのyhのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.8
悪への解放を肯定的に近いニュアンスで描くという意味では挑戦的で、画的にも一つ一つのシーンに力強さがあってシンプルにキマっている、という意味ではとても引き込まれる作品でした。

また、"Joke"という一貫したテーマをあらゆる側面から突いて、作品全体として解釈の余地を残しまくりつつも、まとまっている感じは最高でした。

一方で、人間に対して悲観しすぎ、かつ同時代性を履き違えている気がして、感情移入ができない、映画的な示唆に欠ける作品だったとは思います。

具体的には、ジョーカーが生まれる動機になった人たちが割と一面的で、「いやそりゃ普通にムカつくだろ」という感じでした。人間の不完全さを描くつもりでしょうが、少しやりすぎで、もっと人間て複雑なもんじゃない?と思ってしまいました。

複雑さを伴う、単純には否定できない、人間らしい不完全さ(あるいはその結果としての社会的なアンバランス=貧富の差)が悪を生み出す、ということならまだ現代に通ずるものがあり、考えさせる余地はあったのですが、、

普通に納得してしまいそうなわかりやすい動機で、復讐の過程で悪になる様子を肯定的に描かれても、なんだかなーという感じでした。

期待値が高かったのもあり、否定的に書きましたが、面白い点は他にもありました。。最初に書いたことに加え、演技は凄まじかったです。(ダンス最高でした。新鮮かつ上手いと思えました。)

ただ、もっとソーシャルな映画だと思ってたら、ソーシャルな仮面を被った、パーソナルな作品だった。ということなんですかね…

(この作品の広告、広告としてはとても良かったと思います。笑)
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