リンコロシネマ

ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーションのリンコロシネマのレビュー・感想・評価

4.0
最近観まくっているアーティストのドキュメンタリーは、そのアーティストに興味のない限りなかなか観る機会はないからニッチな世界なのかな?とフッと思った。

10年ほど前にジョーン・ジェットが製作総指揮した映画『ランナウェイズ』を観ていたのでバンドの内情についてはおよそ把握していた。それからランナウェイズを解散してブラックハーツと活動するジョーンは根っからのバンドマンだと感じた。

女性ロッカーのパイオニア、スージー・クアトロは元はバンド出身だったが後にソロに転向して成功を収めた。ジョーンとスージーの大きな違いかと思うがジョーン・ジェットはスージー・クアトロを崇拝し影響を受け生粋のスージーフォロワーだったことは紛れのない事実。これは成功した女性ロッカーという存在が少ない時代だったので至極当然のこと。

だが女性ロックミュージシャンということで芸能界における女性蔑視と闘い続けてきた点は2人に大きく共通している。

私が初めてランナウェイズを観たのは銀座NOWというテレビ番組だったと思う。私は中学生だったが下着姿の奇抜さより「Cherry Bomb」のカッコよさの方に強く惹かれた。当時は情報も少なかったし個々のメンバーのことは分からなかった。

その後、ランナウェイズが解散したのはなんとなく知ってたけどジョーン・ジェットが1982年に「アイ・ラヴ・ロックン・ロール」(I Love Rock N' Roll) のヒットを飛ばした時に元ランナウェイズのギタリストだと気づかなかった。

芸能界で女性ということだけで辛酸も舐めてきたジョーンがフェミニストになることは自然の成り行き。差別を受けてきたジョーンのガーリーでフェミニンな唸り声はロックンロールの象徴そのもの。正にロックンロールをシャウトするために生まれ持った天性の(奇跡の)声だと思う。

メジャーで活動するには「自分を壊さないまま巧みに体制に入っていくことも必要だ」とイギー・ポップも言ってるようにこの世界で闘い成功した女性ロッカーであるジョーンはタフ&ワイルドかつ繊細な偉大なるロックンローラーなのだ。