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麻雀放浪記2020のはせのレビュー・感想・評価

麻雀放浪記2020(2019年製作の映画)
4.0
白石和彌監督作品。斎藤工主演。原案は阿佐田哲也原作の『麻雀放浪記』。1945年に生きる坊や哲が、東京オリンピックが失敗した2020年の東京にタイムスリップしてしまうコメディ。「ピエール瀧容疑者が逮捕されたけど出演するので予めご了承の上、ご鑑賞下さい」とのことだったので了承した。彼の出番はほとんどない。白石組常連ということで脇を固めたらしい。

原作や和田誠版は未見。阿佐田哲也については漫画『哲也』や福本作品、『雀鬼』シリーズなどを観るうちに、なんとなく知っているという程度。麻雀も打つ。何よりほとんどの人同様に、白石和彌に釣られて劇場に向かったのだが、奇想天外な脚本とブッ飛んだ設定でシッチャカメッチャカな作品だった。『孤狼の血』や『凶悪』のシリアスさとは全く違ったテイストで、白石和彌のテレビでの仕事や他の作品はこんな感じなのかと。

佐藤佐吉による脚本がベースとなっていて(この脚本の時点でブッ飛んでいた)、二人のプロデューサーに後押しされて監督がやりたいことをやりたいようにやったらしい。正直、ストーリー展開はアレだが、いい意味でチープで笑える所がたくさんある。例えば、あの坊や哲がネット麻雀にドハマリするとこなんてシュールすぎておかしい。『ヒカルの碁』のSAIを真っ先に思い出した。しかし、タイムスリップした先の2020年も戦後と聞いた坊や哲が「(未来の日本人は)また戦争をやったのか…」と愕然とするシーンは、全然重苦しくないんだけどチクリと刺してくる。これは『猿の惑星』1作目を思い出した。

監督やキャストが楽しそうで、他人の顔を伺わずやりたいようにやった印象の映画だ。僕はこういう映画が好きだ。作家性のかけらもない、原作付きの、ウケ狙いのダメ邦画がなぜかヒットするのにほとほとウンザリしてるが、白石和彌の作品をいち早く鑑賞できることは、日本に住むメリットだと僕は思う。次回作もやはり期待。映画業界もアニメ業界も、製作委員会方式を早く見直して欲しい。
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