のもちゃん

靴ひもののもちゃんのレビュー・感想・評価

靴ひも(2018年製作の映画)
4.3
原題も邦題も「靴ひも」。
何の例え?と思いながらイスラエル映画を初めて視聴。
発達障害の息子誕生後に妻子と別れ、養育費支払いだけの繋がりだったが、元妻が急死。息子の施設入所が決まるまでとして、父子の生活が始まる。
当初、父は障害の特質上生じている「拘りが強すぎる」息子の言動を耐え難く感じた。息子も理解が足らない父が嫌だった。父は、息子の特有な癖を一方的に否定せず受け入れた上で、彼が持つたくさんの良い面を認めようと気付き、二人の間の溝が徐々に埋まってくる。それは息子側も同様。
父の腎不全が深刻で、腎移植しかない状況になった際、お互いを思いやる気持ちから生じた言葉や行動に心打たれた。二人を取り巻く人達もみんな優しい。
「お互いが充分に理解し合えた結果、父子間腎移植手術が出来る!」「親子の絆がテーマだった」と喜んだのも束の間、手術にストップがかかる。息子は靴紐が結べなかったので、被後見人になり、後見人の父は特別給付金を受け取っていた!判断力・理解力が著しく衰えた人と承認されたので、当然に自分の意志で臓器の提供はできないと判断される。例え、実の親子間の臓器提供でもだ。万事休すと思っていたが、消えそうな父の命を守ろうと厚生局法律顧問との面談で必死に訴えた息子。その強い気持ちを汲み取り、特例の移植手術許可が出た。
残念ながら、父は術後感染症で死亡。息子は一度体験した「(障害者支援の)村」で、靴ひもを上手に結び、程々に楽しみながら暮らすことになる。
エンディングソングで繰り返された歌詞が、この映画の言いたかったこととやっと気付いた。
「時間をください。
僕に時間を。
近づくための時間をください」
のもちゃん

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