たぬき

青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ないのたぬきのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

友達の家で視聴。名作(といってもアニメ映画はあんまり知らない)だった。

まず量子力学の勉強をしたらもっと面白く見れる作品なのだと思った。解説が必要なほど話が複雑です。

以下、長い考察

まずアニメから。見たら分かることだけど、ふつうとは一線を画している。なんか村上春樹の作品っぽい話し方だし、一見シュールでドライに見える。たしかに、男女が熱い情熱で結ばれるは恋愛モノは興奮を覚えるものかもしれない。しかし、そんな作品ほど、勘違いやちょっとの行き違いがとても大きな問題に膨れ上がる展開が待ち受けている。恋愛の熱さと誠実さは異なる次元にあった。一方で、青ブタに典型されるものは、そういう脆さが全くみられない。桜島先輩や友達は、咲田の好みも、さらに見た目よりもずっと誠実なことを、まるでゲノム解析をしたように、「完全に」理解できているし助けようとする。だから、彼のどんな説明でもまずは受け入れることができ(例えば、後輩と設定で付き合ってる、なんて話)、セクハラまがいの発言も場に吸い込まれる。咲田も同様に周りを理解している。そのような思春期症候群という夢と幻想が入り混じるあの世界観によって繋がり閉じられた関係性は繊細で寛容だった。(決してただの反抗期のヤンキーみたいなやつが思春期症候群になることなかった)

脱線するがこの完璧なほどの信頼関係こそ、現代の恋愛が理想として求めているものなのだろうか。もしそうなら、草食化は合理的である。おそらく多分、現実にこのような透視能力者はいないだろうし、そもそも僕たち自身が咲田や牧ノ原さんほど人間味があるかどうかさえ怪しい。

今回の映画は、この底で流れ続けていた、咲田と桜島先輩の関係性が表面化する。桜島先輩が咲田に愛を直接的に告白するシーンが話のピークだと思っていた。その後に、桜島先輩が咲田の代わりに死ぬ、というところまでいくとは。咲田一人称の視点で話が進むので、僕のような視聴者も咲田自身も、咲田だけではなく、桜島先輩もまたこのようなコミットする愛情をもつに至っていたのだとその時知る。「咲田が思っているよりも咲田のこと好き」がここまで意味していたとは思わなかった。前述と対比させると、この2人の行動は、誠実さと熱さの融合であった。


一つ問題点を挙げるなら、アニメにもそんなにたくさん出演していない牧ノ原さんの存在が少し桜島先輩の陰に隠れてしまったように思う。アニメ1-3話が好きな僕にとっては、やはり、エンディングで咲田が驚いた表情で出会う相手は桜島先輩であるべきでは。まあそうじゃないところが青ブタらしいのかな。

上に村上春樹っぽい話し方と書いたが、やっぱり少し影響受けているんじゃないかな。村上春樹作品と比較するともっと面白いかもしれない。
たぬき

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