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アートのお値段のfleurのレビュー・感想・評価

アートのお値段(2018年製作の映画)
4.5
邦題はアートのお値段とあるけれど、原題はThe Price of Everything。まさにアートに留まらず、「もの」の値段ってなんだろう?と考えた映画だった。アートマーケットとアーティストはここまで切り離されているものなのだな、と驚き。アートバーゼルでここに作家は来ない方がいいと思うよ、と言い放つギャラリスト。アーティストなんてものになるものじゃない、という美術評論家。アーティストとその周りとでは当たり前だけれど見ている世界も見える世界も違うのだなぁ、と実感した。かつて一世を風靡し、いまは忘れ去られたアーティスト、新進気鋭の若手作家、マーケットで人気の作家、と出演する作り手も多岐に渡っていておもしろかった。「伝えなければならない喫緊の現状がある」と言うナイジェリア出身の女性作家を支援したいと買い手に名乗りを上げていた女性コレクターが競り負けたの、悲しかった。現代アートバブル、ないま、そのなかで上手くやっているジェフ・クーンズはやっぱり賢いんだな。もとウォール・ストリートのビジネスマンとあって、マーケットの扱い方や乗り方がわかってる。
私的にはアートマーケットに対して一貫して否定的・批判的、美術館こそアートのあるべき場所、な評論家のマダムの意見がいちばん近くてしっくりきた。
でも、今も昔も芸術家は有力者や資産家の庇護のもと資金や名声を得てきたわけで、生前は評価されなくとも死後絶大な評価を受ける、なんていうのはアーティストの暮らしにはまったく繋がらないわけで、そういう意味ではアートマーケットのこの現状は然るべきもの、なのかもしれない。
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