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映画ドラえもん のび太の月面探査記のNOBITAのレビュー・感想・評価

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今や映画ドラえもんは休日に家族みんなでわいわい楽しく観るという大山版時代からの固定観念からは製作陣たちは無意識に距離を置いている気がする。もはや子供向けのアニメ映画という定説を超越して一つの芸術作品として鑑賞する映画だ。前作はいわゆる"星野源効果"でまだ映画館からの帰り道に子どもが『ドドド...』と口ずさめる楽しさを嗜好できた。一昨年の南極こそ今年のそれに模範したものを手に取る。

今年の作品の肝となるキーワードは「異説」だ。月にウサギがいるというのび太の幼稚だが芯がある考えを例のごとくドラえもんの道具「異説クラブメンバーズバッジ」によって実現する。公開したばかりなので極度のネタバレは避けるが、このバッジが物語の鍵を握り、「異説」と「定説」が相互しあう世界観を堪能できる。異説世界と定説世界は重なり合いつつ、独立している。しかしそこで終わらせないのが今回の脚本家・辻村深月の仕上げだと拍手を送りたい。彼女の小説「スロウハイツの神様」を読了した時にも似たようなもの覚えを抜き取ったが、バッジをつけた人が定説世界から消えるわけではなく、両者の相互作用がこれまた難解でラストはかなり混乱した。

またドラえもん映画で一番の活躍者といえば、しずかちゃんだ。ダメンズ達(良い意味で)からは違った角度から事実を把握し、ここぞという時にピンチを一変させる。彼女のあっと言わせる行動力に毎年鳥肌が立つ。


珍しくドラえもんが名言を放っていたので補足。
「想像力は未来だ。想像力は思いやりだ。想像力が無くなれば破壊だ」
生まれつきの盲目さで己が証明しようともしない定説を鵜呑みにするな。
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