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象は静かに座っているのTUのレビュー・感想・評価

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
4.5
渋谷シアターイメージフォーラムにて。

端的に言うととにかくずっと暗くて長い。
でも良いか悪いかで言うととても良い。そう言う映画でした。

街中がありえないほど退廃的でポジティブな要素が一つもなくて登場人物が全員人生に絶望してる状況が4時間続くわけだけどしかしながら、含まれてる空気感には真空管のアンプでレコード聴いてるような温かみがあって見終わった後にはなんとも言えない充実感があった。
普通の映画ならカットするようなシーンを残すことがおそらくこの空気感を生み出す要素としては大きくて、その為にはやはりどうしてもこのくらいの長さ必要だったのだと思われる。そして、それが的確で成功してることが本当にすごい。
(同じような長回し映画でカートコバーンの最期を描いた『LAST DAYS』というものがあるけどあれは本当に退屈で暗いだけだった…)

いい台詞もたくさんあった。その中でも

男「俺の人生はゴミだ 掃除をしてもすぐにゴミがたまる」
女「みんなそうだって知らなかった?(曖昧)」

というやりとりには個人的にかなりくるものがあった。理不尽さや思い通りにならないことをなんとか取り去ってもまた次の重荷がのしかかってくる人生というものを言い得ていていて、この映画の人物ほどではないけど自分の人生にもやはり少なからず当てはまるものがあり、相応に救われたような気持ちになれた。
この映画に出てくるような言葉は本当に感情の淵に立たないと湧き上がらないだろうというものが多くて、映画の流れとは別のところでちゃんと点を打つ静かだけど確かに気持ちに迫ってくるものがあって、それもとても印象的だった。

音楽がまあまあ駄目だったなというのはあるけど、今までの人生で一度も観たことないタイプの映画だったのでとても新鮮で観れて良かった。
監督はこの映画を体現するかのように自殺してしまったらしいけどこういう視界の作品を後の人に与えられたことはクリエイティブ冥利に尽きると思う。
色んなことを諦めた時にもう一度観てみようかな。
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