私見として今まで見てきたミュージカル映画には、これ映画にする必要、あったか?と疑問に持ってしまうようなものが多かったですが、今作はもはやそこら辺の売れてる映画よりもよっぽど映画です
流石です
完全に心奪われました
編集、ライト、構図、動き、ほぼ全てシンプルかつダイナミックにわかりやすく、スピルバーグ作品だと知らなかったとしても懐かしさや安定感を感じる画づくり
強すぎなほどはっきりしたキーライトは、スピルバーグ的と取るか古典的と取るか、はたまた普通の映画と差別化した“ステージ感“を演出させるためか
それでいてなぜここまで引き込まれるのでしょう
未見ですがオリジナルのストーリーに忠実と言われているようなので言及しますが、原作の時点で展開の落ち込みが深い作品なのでトップである2人の恋をいかに幻想的に描くかにこだわったと思います
ダンスパーティで激しく行き来する周りとそれに度々遮られてチラつくライトが、見え隠れながらもしっかりと惹かれ始めている2人の眼差しを滲ませ、恋の始まりの高なりと不安を演出
マリアに夢中なトニーの足元で水面にきらめく家々の灯りが表現する胸のときめきや、刑務所を出てもなお、環境的、潜在的に不安定なトニーの境地を表す薄い木板の渡し橋と、2人を分つ非常階段の鉄格子
そんな状況でも2人の顔を照らしてくれる美術館のステンドグラスの夢色の彩り
しかしキスを交わす直前ではその後の未来を暗示するかの如く、トニーの顔だけが暗く、照らされていない…
こんな文章書いてて自分でも恥ずかしくなりますね
でもそれだけ引き込まれました
他にも、決闘に向かうジェッツやシャークたちの後ろで光る赤信号や、サイレンの如く何処かしこによぎる車のライトが表す彼らへの警鐘、伸びて鋭く向かい合ったジェッツとシャークの影が作る攻撃的な緊張感など、CGなし現場ででできる目一杯の映像表現の数々
映画ってなんて素晴らしいんだ…
物語全体の展開におけるトップをこれでもかというほど素敵に演出し、ダウンとの落差を作り出すことで2人の純粋な愛の尊さを観客に体感させる
それもごくシンプルなテクニックの数々で…
スピルバーグ大先生、爺さんになっても少年のようなあなたの微笑みが恐ろしいです…
弟子にしてください。