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きみと、波にのれたらのエスキックスのレビュー・感想・評価

きみと、波にのれたら(2019年製作の映画)
4.3
我々の住む現実の中にあるリアリティを、アニメーションの中でも同じ様に感じることそのものが“アニメーションでしか味わえない感動”だと細田守が言っているんですけど、この映画の前半は正に現実での暮らしや日常生活のようなリアリティが積み重ねられた作りになっていて、アニメだからこそ得られる感動と快感があったと思う。港とひな子が少しずつ絆を深めていく様子をダイジェスト風に描いた序盤の展開が本当に好きで、正直ここで泣きそうになってしまった。生きてる人間たちが、本当にスクリーンの中にいる。

素人なので細かい技術等は分からないけれど、アニメーションとしての完成度もメチャクチャ高かったと思う。炎や水といった自然描写、卵の調理シーンに見られた食べ物描写、肉体の躍動や疲れさえも表したアクション描写、どこを取っても素晴らしくて、日本最高峰のアニメーション技術をスクリーンで浴びる様に体感できて本当に幸せだった。

後半の突拍子もない展開は、もしかしたら戸惑う人がいるかもしれないけど、ドラッグ描写と見紛う様なぶっ飛んだ展開を経て、実はしっかりと誰にでも共感できる普遍的なメッセージに着地していく辺り、湯浅監督作品に共通する『日常への肯定』を今作でもしっかり感じた。繊細なアニメーションやどうかしてる展開も勿論好きだけど、俺が湯浅監督の作品が好きな理由は“日常”や“生活”っていう当たり前の所に着地してくれるからだな...と再確認。アニメ好きであれば絶対外せない1本です。