更生のためにオランダ人の船長に預けられた5人の不良少年が、過酷な航海の末に出会う不思議な世界を描いた、ベルトラン・マンディコ監督の長編デビュー作となるダーク・ファンタジー映画。原作とは言わないまでも、ウィリアム・S・バロウズの小説『ワイルド・ボーイズ(猛者)―死者の書』が元になっている。この小説は映画化が何度か企画されたが実現していなかったが、映画のサウンドトラックを打診されたデュラン・デュランはこの小説が元にして『ザ・ワイルド・ボーイズ』を作ったとか。
バロウズの作風からも想像できるように、本作は芸術性を追求した実験的な作品であり、娯楽性はほぼゼロ。カイエ・デュ・シネマ誌の2018年ベストテンの第1位にランクされたことからもわかるように、アート系の批評家からは高く評価されている。一方で、エログロとまでは言わないまでも、特徴的な性的描写が多く出てくるので、不快に感じる人も少なくないだろう。
個人的には、この種の映像は趣味ではなかった。前半はもの珍しさも手伝って興味深く見れたが、後半はさすがに退屈になってしまった。でも、本作には評価できる点もいくつかある。例えば、ほぼCGによる視覚効果を用いずに実写で虚構世界を表現することで、昔の表現主義的な映像の雰囲気が出ている点は、なかなか味わい深い。ただし、白黒とカラーの使い分けはほとんど意味不明であるが。また、5人の不良少年を演じているのがすべて女優という点も評価できる。ストーリー的に得策なだけでなく、彼女たちの演技がなかなか良いのである。特に、『7月14日の娘』でコメディエンヌぶりを発揮したヴィマラ・ポンスの男っぷりが良い。このような女優の起用やストーリー展開から、本作をLGBTQ映画(もしくはジェンダーレスを志向する映画)と見ることもできるだろう。
本作で怪しげなドクター役で出演しているエリナ・レーヴェンソンは、ベルトラン・マンディコ監督とともに、21年間で21本の短編映画を作るというプロジェクトを行っている。