三体艦隊

惡の華の三体艦隊のレビュー・感想・評価

惡の華(2019年製作の映画)
2.2
規範への侵犯=エロティシズムという主題が物語に通底していると思うが、これを『思春期』特有の乗り越えられるべき病として捉えている時点でこの作品自体の限界があると思う。

この主題を現代日本にて表現しようとした試み自体は面白いし、日本にはキリスト教圏のような規範自体が実は存在せず、どこまで行っても規範とそうでない領域との境目がないということへの苦しみも表現されているところは良かった。
この苦しみに折り合いをつけて、あるいはみないようにして、大人になっていくということだろう。しかし、思春期特有の病と還元して語られるほど軽い問題なのだろうか?

規範自体が存在しない一方で規範の外への越境への欲求があるということの矛盾から生じる苦しみは、仲村という特殊な個の苦しみではなく、普通の人にどこか共通する苦しみなのだろう。この苦しみはまるで幽霊のように普通の人々に取り憑いている。日本社会には残念ながら悪は存在しないが、幽霊は存在する。

現代日本では、思春期というフォーマットで再現するしかなかったのかもしれないが、その先をみたかった。まだ未見だが、井口監督の新作などはそこに切り込んでいるのだと思う。

また、邦画でよくみられる苦しいときにやたら叫ぶ主人公が非常にノイズになった。情緒をあからさまに出しすぎると主題が安っぽくみえるものだ。
同様の主題を取り上げた『小さな惡の華』は、落ち着いた画と音楽で続いていき、もう少し高級感があった。同作は、キリスト教圏の話ゆえ確固たる規範があり、規範への究極の越境としての死があるのは、今作品で結局死ねなったことと好対照で興味深い。

まとまりのない文章になってしまって申し訳ないが要するに、エロティシズムの主題を思春期というパッケージに押し込めていて、それが無前提に乗り越えられるべきものとされていること自体がやや甘く感じたことと、演習の安さが目立ったことが気になってしまったというだけ。

最後に、春日の俳優は強そうすぎるし、仲村さんは可愛いすぎるので、もうちょっとよい配役があったのではと思う。
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