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キングスマン:ファースト・エージェントのnuxのレビュー・感想・評価

5.0
あまりにキングスマンが好きすぎて、期待しつつも前日譚が前作2つを超えてくるとは正直思ってなかった。フィクションベースの前作と違って今作は驚くほど第一次世界大戦の頃のヨーロッパ史の史実に基づいていて、前作とはまた違う方向で最高な作品。もちろん俳優さん達も素晴らしいんだけど、監督凄い。キャスト全替えで時代もストーリーも違ってもこれだけしっかりキングスマンとしてのエッセンスが効いてて面白いのは凄い。

予告編でラスプーチンが出てきてたので軽くロシアいじりしてるのかなぐらいで予想していたけれど、まさかこんなにゴリゴリに第一次世界大戦周りの史実に沿いつつキングスマン誕生に絡めてくるとは。歴史あまり知らなくてもただのアクションものとして楽しめるぐらい作品自体のクオリティは良いけど、ヨーロッパ史の知識がある人は何十倍も楽しめる映画。フランツ・フェルディナント暗殺の細かい経緯描写とか、独露英の3帝の仲違いとか、ロシア帝政の話とか、嘘みたいな本当の話なのでめちゃくちゃ面白い。ラスプーチンとかマタ・ハリとかが目立ったけど、その他の脇を固める細かい人物もほぼ全員実在の人物だし行動も概ね史実に似ていて非常に芸が細かい。公式パンフレットにも史実周り詳しく記載があったのでかなりおすすめ。ただの派手なアクション期待してた人にとっては前作よりおもんない映画だったかもしれないけど、歴史好きにはかなり激アツの映画だった。

冒頭の南アフリカのボーア戦争時代、帝政ロシアへのラスプーチン介入、第一次世界大戦の独×英前線、ラスボスとの決戦、全てが何か別の映画のメインシーンにしてもおかしくないぐらい力の入った見応えあるクオリティで、これが1本の映画にまとまってるなんてお得感がやばい。特に私はWW1~冷戦あたりの英独露史と戦争の映画がまじで1番好きな映画のジャンルなので大好きなキングスマンとこんなに絡んで来られたら最高という感想しか出てこない。

もちろんキングスマンの歴史を描いている数々のシーンもかなり痺れた。1作目のパラシュートのシーン大好きなので、なぜあれがテスト項目になったのか察して胸熱。人物は変わっても、根底に流れているシステムや人間関係や信念が変わらないのが伝わってきた。007ばりにキャスト変えながらずっと続いて欲しいと改めて心から願った。とりあえずエンドロールで流れたあのシーンで次回作へのワクワク感が半端じゃないのでまた数年楽しみにしている。Matthew Vaughn最高。
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