だいき

Fukushima 50のだいきのレビュー・感想・評価

Fukushima 50(2019年製作の映画)
4.3
原作『死の淵を見た男』は読了済み。
故に本作の監督の前作である『空母いぶき』の駄作具合を知っていた分不安しかなかったのが本音。

ただ本作に限って言えば原作にもあったフィクションじゃないかと思うくらい熱い現場の方達の覚悟だったり行動だったりが全部では無いものの比較的そのまま描かれていて、その点については良かったと思う。

また、この映画を観る前に懸念していた、中操や免震棟等の位置関係だったり、専門用語の意味についてはVFXや登場人物のセリフを介して非常に分かりやすくなおかつ自然に説明されていた。

最後のエンドロールで流れる映像も色々考えさせられて、ずっと眉間に皺寄せながら複雑な気持ちで観ていた。

ちなみに、一部わざとらしい演出があったと指摘されている所もあったけど、原作曰く中央操作室内は被災直後は非常ベルが鳴り続けていたし、ベルを止めてもマスクを装着してからは声がこもって聞こえていたため常に怒鳴るように会話していたというのを考慮すると、少なくとも中操内でいちいち大袈裟に怒鳴っていたシーンについては実際と同じだったりします。

あとVFXを使ってエンタメ性を強くしているという批判も見ましたが、個人的にはあの当時をリアルに体験していない年代や外国の人達が観た時に、あの津波がいかに巨大で脅威的だったか、日本があの時どれだけ危険だったかが臨場感を持ってリアルに伝わりやすいので、必ずしもネガティブには捉えなかったかな。

逆にネガティブに捉えた点としては、一連の米軍のシーン。
たしかに米軍のトモダチ作戦は3.11において多大な支援になったとは思うけど、フィクションの美談と合わせてあまり福一原発対応と関連しない形で登場させるくらいなら、その尺を原作から省略された他の原発作業員の人の話に振っても良かったんじゃないかなぁ。
特に、津波によって真っ先に犠牲になった原発作業員2名については、少しでも良いから触れてほしかったというのもある。海外戦略も考えての事だとは思うけど。

とはいえ全体的に観たらあの出来事がよくまとまっていたし、現場の方達が必死に事態に当たっていた空気感が伝わって良かった。
これをきっかけに原作も読んでみるとあの出来事をより深く知れて良いと思う。
批判的ではあるけど菅元首相にもちゃんと取材して意見を載せてたり、結構フェアな本なんだよね。

それとこの映画公開に合わせて、映画を観た菅元首相にインタビューした記事もネットで公開されているので観てみるといいと思います。
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