よどるふ

ジャック&クロックハート 鳩時計の心臓をもつ少年のよどるふのレビュー・感想・評価

4.8
冒頭の「触れたものを瞬間的に凍らせる冷気から逃げる鳥」のアニメーションに早くも心を掴まれる。そんな“冷気の可視化”を始めとした“観て楽しい”アニメーションの快楽が全編に渡って詰め込まれている。

ミュージカルパートの幻想的な絵作り、平手打ちによる場面の切り替わり、アコーディオンみたいな列車、カメラのズームインような画面の歪み等々、どこを切り取っても目が喜ぶ。マジックリアリズム的な世界観に様々なアニメーションの技法が見事に同居している。

音楽が「絵と内容に即している」から少しハミ出すような独特さを持っているんだけれど、その音楽を手掛けているバンドの一員がマルジュー監督自身であり、さらには監督が原作小説の原作者でもあり、主人公ジャックの声優も務めている。なんともマルチな才能ぶり。

音楽が独特な分、主役のふたりが踊るシーンとラストシーンにおける“無音”が特に印象に残る。本作は2013年に公開され、日本では劇場未公開の作品みたいなんだけれど、今年になって日本でDVDが発売された作品なので、今年のベストに入れてもいいかもしれない。
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