アイルランドを旅行中の記者フィッツジェラルドは靴職人の妖精レプラコーンに出会う。宿の娘に惹かれながらもアメリカに戻り、政界に進出する出版界の大物オーガーのゴーストライターになる。オーガーに手配されてやってきた執事はレプラコーンにそっくりで、という話。
望まぬ仕事で大金を得るか、はたまたのんびり人間らしい幸福を得るかという、キャプラ的と言えないこともない主題だけど、そこまで仰々しくなく「気まぐれ天使」「ハーヴェイ」を残したヘンリー・コスターらしい心温まるファンタジー。
アイルランドで霧の吹く夜の森でレプラコーンを追いかける高揚感。伝承のレプラコーンは小さい妖精だけれど、ここでは人サイズのオッサン妖精で、主人公との交流がとぼけた面白さ。アイルランドの田舎人のちょっと変わり者な穏やかさとニューヨークの都会人の対比。毎度邪魔の入るキス。執事の突然のアクション。参加した結婚パーティーで歌手が歌う中の乱闘は、ルネ・クレールを思わせる。多幸感に包まれた映画。
アイルランドの場面は緑に染色されていて、ニューヨークは白黒。米版dvd-boxには緑染色/白黒版と全編白黒版が両方収録されている。緑染色の方が当然不思議な雰囲気がある。
主演はタイロン・パワー。34才くらいと若いのにちょっと老けてるけど、まだかっこいい。眉が太いなあ。あまりファンタジー的な俳優とは思わないけど神秘に目覚める「剃刀の刃」やタイムスリップする「I'll Never Forget You」がある。
レプラコーンはセシル・ケラウェイ。あまりにもファンタジーの常連すぎる故に、キャスティングだけでも成功したようなものでは。ヒョコヒョコ歩く変なおっさん。愛嬌たっぷり。夜の田舎道を行く後ろ姿がファンタジー的に絵になる存在感。
宿屋の娘がアン・バクスター。婚約者はジェーン・メドウズ「湖中の女」、その父で出版界の大物がリー・J・コッブ。
脚本は「幽霊と未亡人」で既にファンタジーを手がけたフィリッフ・ダン。