Tanuki

人間失格 太宰治と3人の女たちのTanukiのレビュー・感想・評価

4.1
良かった! 太宰のはた迷惑な生きざまを、美しく描きながら、絶望させ、断罪していた。それに、太宰と関係を持った3人の女性たちの半生や、それぞれの個性をしっかり丁寧に映し出していて、タイトル通り彼女たちのための映画だと思えたとこも、良かった。

太宰の息子って、ダウン症だったんだね。そのほかいろいろとしっかり事実に沿った作り込みが多くて、いつもの蜷川実花さんぽい色彩の派手派手しい「現実離れ感」と、いいバランスになってた。太宰っていう作家の、ひとつの解釈、すごく面白かった

あとはやっぱり、出演している俳優さんたちがうますぎて、大袈裟な演出でも浮かないし、キャラクターの行動に説得力も生まれるなと思った。二階堂ふみさんの演技がうまいから、富栄の思考回路に納得しちゃうし、宮沢りえさんの演技がうまいから、美知子の期待も理解できる。

何より小栗旬さん、やっぱり良い役者だなあと思った。年々うまくなってる気がする。顔から強い感情がにじみ出してる瞬間の、見ごたえがすごいある。だらしなくて情けないクソ男なんだけど、人をたらしこむカリスマ性があるって、すぐにわかる演技だった。

あとは、近代文学ニワカでも、太宰VS三島のシーンはテンション上がった。三島由紀夫にあの台詞を言わせるのって、めっちゃあからさまなんだけど、そうだなあ、すごい対照的な二人だなあ~と思ってワクワクしてしまった。高良健吾さんも良い。

千葉雄大さんと瀬戸康史さん、かなり似た雰囲気の俳優さんだと思っていたんだけど、同じ画面に収まると思わなくてびっくりしちゃった。瀬戸さん全然出てこなかった笑

案の定、太宰治読みたくなった。私は最後に発表された『グッドバイ』が好きなんだけど、いつ書いたのかなあ

面白かったです。人間ドラマとして見ごたえあるし、太宰治の行為を全肯定しない、裏の苦しみをしっかり描く感じが良かった。もちろん映像も美しい。最高の演技が見れる。迷ってる人、おすすめです!
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