村田泰祐

ジョジョ・ラビットの村田泰祐のレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
3.6
10歳の少年の成長をユーモアと戦争の狂気を交えて上手く描いていた。

ナチスヒトラーを信奉する10歳のジョジョは、母親と2人暮らし。父親は出征以来2年間音信不通、姉は既にこの世にいない。

ジョジョには空想の友達のアドルフ・ヒトラーがいる。週末のヒトラーユースキャンプでいじめられたジョジョだが、アドルフに励まされ勢い余って自爆。

大怪我を負ったジョジョは兵士にはなれず、部屋でいることが多い。ある日、死んだ姉の部屋から物音がするので覗くとそこにはユダヤ人の姉によく似た少女エルサがいた。

ビートルズのI Want To Hold Your Handから始まる今作は、ボウイなどの楽曲が使われている。どれも貴重なドイツ語バージョンである。

穏やかな雰囲気から始まる今作だが、主人公は熱心なナチス信奉者で、空想のヒトラーが笑顔で走っている。

この空想のヒトラーは、ジョジョに刷り込まれたナチズムの比喩。ジョジョがエルサを知るにつれて空想のヒトラーはジョジョに辛く当たるようになる。

10歳のジョジョから見たカメラアングル。スカーレットヨハンソン演じる母親が、ジョジョの視点からだと足しか映らないことがあるのだが、これが後で効いてくる。

ブラックユーモアと戦争の悲惨さを織り交ぜており、後半の急展開や演出の変化には驚いた。

ヒトラーを自ら演じきり、ナチズムを痛烈に批判するタイカ・ワイティティ監督に拍手!
村田泰祐

村田泰祐