Rita

世にも怪奇な物語のRitaのレビュー・感想・評価

世にも怪奇な物語(1967年製作の映画)
3.9
死を呼ぶ者。

エドガー・アラン・ポーの3つ短編の怪奇幻想小説を、ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニの3人の監督が映像化したオムニバス作品。

第一話「黒馬の哭く館」

美しく残忍な女伯爵の従兄弟である男爵家のウィルへルムへの歪んだ恋慕を耽美と退廃の中に綴る。

誰もが私の思い通りに動いて逆らわないのに彼は何故私を拒むの?という我儘な女の"こんな気持ちは初めてよ"みたいな幼稚な乙女心が悲劇を生む。フレデリックと正反対のウィルヘルム、残酷なゲームを好んで毎晩乱交パーティをしていた彼女が、彼に恋をして変わっていく姿がピュアで好き。他の人とは違うウィルヘルムに惚れてしまうフレデリックの気持ちに凄く共感。

フレデリックの知らない心の奥の優しさを馬との友情を通して知っていく。馬との過ごす日々。どんな時も心を交わしている。男爵が乗り移ったかのような馬の演技が凄かった。ラストでは彼女は宿命に見舞われてしまいますが、神秘的で御伽噺のようで素敵なお話。

フレデリックを演じたジェーン・フォンダと実の弟ピーター・フォンダがウィルヘルムを演じていて、さらにはジェーンの夫ロジェ・ヴァディムが監督をしているというのが面白い。

第二話「影を殺した男」

背徳的な生活に溺れるウィリアム・ウィルソンは、自分と同姓同名かつ瓜二つの男に悪事を邪魔されることに怒り彼を殺害するが、皮肉な末路を辿る。

サディストであるウィルソンの幼少期から死に至るまでのもの不思議な出来事の数々をミステリアス・タッチで描く。夜道を歩いていた女性を拉致して強姦。裸で手術台にくくりつけ、メスを持って手術の真似事をしようとする行き過ぎた彼の言動。ウィルソンが悪事を働く度に、彼は姿を現し無実の人が危険にさらされているところを助ける。

アラン・ドロンが二人、なんて至福な映画なのでしょうか。美貌という名の狂気ですね。

人間には善と悪が両方存在する。正義と悪は天秤に掛けてもどちらも平行になってしまう。ウィルソンvsウィルソンの対決でどちらかが勝っても片方が無くなればもう片方も消えてしまうのだった。

第三話「悪魔の首飾り」

紅に染められた夕暮れのローマに降り立った俳優が、白い鞠を手にした少女の幻影に取り憑かれて狂気の淵をさまよう。

吸血鬼のような動きをする英国人ダミット。彼には悪魔が見えている。イタリアでは奇妙な情景が広がる。マネキンのような綺麗な女性たち、男性は人形のような不気味な笑みを浮かべる。悪魔はアル中でみる幻覚なのか、それとも本当に"死"に招いているのか。結末が全てを語っている。

熱のある日に見る意味不明な夢のよう。始まった瞬間から真っ赤な夕陽に包まれ、世界観が目の前に広がっていく。とても美しかったイタリアの授賞式でダミットの元へ座りプロポーズをしてきた女性は何だったのか。深く考えず世界観に浸るのが正解なフェリーニの作品。芸術の秋に良い作品に出逢いました。🍂

愉快な音楽と陽気なイタリア人のユーモアさが不気味ながらも面白かった。悪魔の白いワンピースを着た少女もゾッとするような恐ろしさだった。

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"ホラー秘宝2023"で映画館で観賞することができてとても幸せです。この作品の怪奇な雰囲気に魅了させられ、2回観に行きましたが、こんなに贅沢な作品レア過ぎて感動しました。本当に最高の思い出です!
Rita

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