センター分けのましゅちゃん

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスのセンター分けのましゅちゃんのレビュー・感想・評価

3.1
まさに"怪作"と呼ぶに相応しい一本。
サムライミ監督にしか撮れない作品。

まず"マルチバース"という
ものすごく抽象的で
掴みどころない空間的存在を
視覚的に映像として形あるものに
落とし込んである事がすごい。

前作同様、このシリーズは
ホラーを主戦場にしてきた
監督を起用する事で、
映像を視覚的に革新かつ斬新で
不気味なものにより
コーティングする事が上手く、
個性豊かなMCUシリーズでも
一際異彩を放つシリーズなので
その続編としては非常に質の高い一本。

ホラー映画は
観客を驚かせたり、怖がらせるために
視覚的に斬新な工夫を凝らした
映像や演出を多用するため
その映像的こだわりや独特の演出が
ふんだんに盛り込まれている。
いわばクセの強い一作。

前作のスコットデリクソン監督同様、
今作もホラーを主戦場にしてきた
サムライミならではの
視覚的に優れた映像描写がたくさん見られ、
映像的には過去一番の作品と言っても
過言ではない。

脚本も次元の中を
逃げ惑うストレンジと少女、
それを追うワンダと言った
単純なものに
マルチバースの別次元の概念を
絡める事で単調になりすぎず、
かつ複雑にもなりすぎない
ギリギリのラインを狙ったものとして上質。

ただこのサムライミの持つこだわりや
手法と、
"MCU"というプラットフォームが
うまく噛み合っていないのかなと
思うような点も多々存在する。

今作のサムライミは
スパイダーマン3部作とは違い、
自らの味や特色を、
MCUの世界でも容赦なく
ふんだんに盛り込んでいるため、
サムライミならではの
ホラー的な手腕が
キラリと光るシーンもあれば、
まさに「死霊のはらわた」然りな
ホラーコメディ的描写が
本作のMCUとしての
ストーリー展開の緊張感を
若干阻害していると思わざるを得ないものも
いくつかある。

このサムライミ節たっぷりの演出を
新しいMCUの一面として許容できるか
さすがにやりすぎだとみるかで
賛否が真っ二つに割れると思われるため
まさに"怪作"と言える。