おかだ

21ブリッジのおかだのレビュー・感想・評価

21ブリッジ(2019年製作の映画)
4.0
マンの意志を継ぐもの


三度の緊急事態宣言を受けて休業が決まった都市圏の映画館。
辛うじて対象外となった神奈川ですけれど、興行法のもと、圧倒的な換気性を誇りかつどう考えても飛沫など飛ばないはずの映画館。
さすがに憤りを感じるけれどまぁしょうがないんですかね。


さて、「21ブリッジ」。
久しぶりにアメリカ発の本格的な娯楽大作映画を映画館で観られた気がして非常に満足でした。

ブラックパンサーで有名なチャドウィックボーズマンの遺作という点でも話題になってしまった今作は、70年〜90年代と脈々と受け継がれてきたアメリカの刑事モノノワール映画の正当後継者といった位置付けで、良い意味で定石通りのストーリーテリングとショット繋ぎによって高い娯楽性と一種の安心感を絶えず与えてくれる楽しい作品でございました。


あらすじは、麻薬強盗に押し入った2人組が計画外の警官殺しの末に50kgの麻薬を持って逃亡。
チャドウィックボーズマンらニューヨーク市警がマンハッタンに架かる17の橋やトンネルを全て封鎖し、1夜というタイムリミットの中で執念の追跡を始めるというもの。

そんな感じで、ストーリーは王道の刑事モノ。
陸の孤島と化したマンハッタンというソリッドシチュエーションと、一夜というタイムリミットによって上手にサスペンスをやっている。

そんな正統派のストーリーと演出の数々から漂うアメリカ古典刑事映画に向けたリスペクトは、単なる懐古主義に留まらず現代のアメリカ刑事映画へのアップデートという挑戦的な態度も示している。


同ジャンル映画への数々のリスペクトという点では、私が認識できた範囲でも「フレンチコネクション」や、あるいは元軍人設定のレイの銃撃戦にもみてとれるマイケルマン監督作品の数々などがあろうか。
特に地下鉄のシークエンスなんかはかなり意識的にそうだったと思うし、それからガンマニアとしてのマイケルマンの影響は全体的にあって、何とも懐かしい気持ちにさせてくれる。

もちろんそれはそれとしつつも、早めのテンポで99分という時間の中で可能な限り多くの要素を詰め込んだ作劇は非常に現代的。
ラストJKシモンズ宅での一連はやや説明的で冗長に感じたけれど、それでも最後まで二転三転するプロットとスピード感にも好感を持った。


こういった作品の構成、例えばルーベンフライシャー監督が得意とするようなジャンル映画の抽出と再構築、更新。
つまり、ジャンル映画のあるあるの踏襲に加えてのプラスアルファの提供。

非常に誠実な態度であると感じるし、何より100分以内にこれだけの要素を踏まえて収めてしまう手際に感服した。

そのほか、よく言われていたが路面を濡らしての撮影によるノワール映画の画面の質感の再現をはじめとしたマン並みの夜間撮影のこだわりも抜かりなく。


奇しくも、「ミナリ」「ノマドランド」など非常に息苦しい作品が象徴するここ数年の中では、今もっとも求められている娯楽大作だったんじゃないかなと思いました。

間違いなくおすすめです。
おかだ

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