M太郎

犬鳴村のM太郎のレビュー・感想・評価

犬鳴村(2020年製作の映画)
3.0
おどろおどろしい食人族系ホラー映画か?と思っていたら割合ソフトな正統派伝奇民俗ファンタジーでした。ホラーからファンタジーへの切り替えの割り切り方が印象的。ラストは完全にアクションにシフトしていて、なるほどエンタメホラーとはこういう事を言うのだなぁ。


中盤まででチラ見せされた各要素が集合して真相があらわになる流れは大変に面白かったです。ここら辺がとっても民俗学ミステリー的で大好物な部分。犯人(?)の動機も含めて、実は『金田一少年の事件簿』に結構近い作品に思えるなぁ。

筋としては好きな部類のお話なのですが、ホラー演出に足を取られてうまく語れていない感触。特に主人公のモチベーションと設定の絡みを語れていないので、困惑しているばっかりになっているのが困り物。主人公にもっとパーソナルな悩みとかがあって、それを絡めて昇華できたらよかったのかな。

ホラー表現。冒頭こそ王道の何かいるんじゃないか系空白が最高ですけど、以降はどちらかと言えばハッキリ見せてしまうスタイルに。霊的存在の表現は独特だけどタイムラプス動画みたいで皆急いでる様に見えちゃいました。電話ボックスシーンの鮮やかな引き際にはちょっと笑ってしまいました。

個人的には「怖い映画」「嫌な映画」の枠組みには入らない類ですが、しかしシネコンにかかるエンタメ映画と考えるとなるほどなーと納得する点が多かったです。特に霊が姿を表してからの「張り詰める嫌さ」なシーンの少なさは絶対意図的だよなぁ。個人的にはそここそ、とも思うのですけど。
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