TANULA

バースデー・ワンダーランドのTANULAのレビュー・感想・評価

3.8
お花と自然の景色が好きな人は映画館で見てくれたら気持ちよいのでは。
身終わったあと、主題歌の歌詞がすごく真っ直ぐに受け止められる。あんまり今までそういう映画に出会えなかったかも。他にあったら見たいので教えて欲しい。

感動する映画を心のこわばりをほぐすマッサージとするなら、この映画はなんだか優しく撫でるような、手の温かさでこわばりが解けていくようなそんなかんじって思ったのです。ポキポキ&いた気持ちいい系ですっきりするようなマッサージという印象ではない。
だからあえて激しく盛り上がる展開とかがなかったのかな?って勝手に思っている。

映画の最後のあかねちゃんのセリフ「私の世界が少しだけ広がった。気がした。」
なにか冒険をしたからって、その前とそのあとの「私」がまるっと変わってしまうことが成長ではない。例えば物静かな人が常に自分の主張や思いを声を大にしてハッキリ示す性格になるような、明瞭劇的なものが成長ではない。
むしろ冒険の中での体験や出会いを通し、自分の心に元々備わっている優しさや想いと、向き合い、それをちょっとずつちょっとずつ引き出す。元々持っているものなんだから考え方と行動に劇的な変化は無いかもしれないけど、少しだけ今までとはちがう。
そういう少しずつな変化を積み重ねることも成長の形なんだよって言いたかったのかな~なんてちょっと思った。
まあこれを見た翌日から令和で、世界が劇的には変わるわけじゃないけど、ちょっとだけ人々は心の中で少し新しい時代を意識して明日からを送るんだろうな、、、という実感もあってこういうふうに感じた。

あとこの映画の設定で好きなところは、あちらとこちらの時間の流れの世界観。
私たちの世界は毎日が目まぐるしく変わってその時計の針もサクサク進んでいるように見える。でも素朴な暮らしをしている人達の方が実は早く時が流れている。なんだか矛盾みたい。
この映画の中で何度も出てくる言葉のひとつに水があって、水も時も流れるという動詞で表現される。水が流れなくなったから世界から色が消えていくのだと、ヒポクラテスたちは言う。
水は勢いがあってもゴテゴテした余計なものだらけの窮屈な水路をスムーズには流れていかないし、時に水路は壊れてしまう。余計なもののない広々とした水路ならばきもちよくそしていつまでも流れていくのではないか、、、。

ちょっと考えすぎだろうかとか思うけど、でもそれぐらい色んな解釈や感想が見れたら楽しい映画なんじゃないかな~と。
TANULA

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