とぽとぽ

ソヴァージュのとぽとぽのレビュー・感想・評価

ソヴァージュ(2018年製作の映画)
3.8
監督脚本カミーユ・ヴィダル=ナケは説教するでも非難するでもなく、ただ男娼のリアルを赤裸々に積み重ねていく。その熱量に応えるように主演フェリックス・マリトーは体を張って素晴らしい演技を見せてくれる。確かにタイトル通り荒々しく生々しく心かき乱される。彼が演じる主人公は最初お人好しで、他者への共感力が高く、また自身も孤独を抱えているように他者に寄り添うことができる人物として描かれる。脆く優しく、生きるという曖昧な矛盾を抱える。しかし現実はつらくも、体を売ってその日暮らしするしかなく、追い打ちをかけるように病気も恋心もズタズタで、ひたすら落ちていく彼のさまを時に見ていられなくなりそうなほどだ。それでも監督主演共にそこから逃げることはない。ここには作り手の温かな眼差しや自己憐憫といった類のものは排され、事実だけが克明に刻まれる中で最後に向けて静かなカタルシスが観客を道連れにして爆発するよう。うまく言えないけど本当に凄かった、好きとか嫌いとか超えた次元で揺り動かされるみたい。せめてもの救い(?)として"ピアニスト"との行為というより暴力シーンが無くて、観客的にはまだ良かった。

なぜ客とキスを?
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