あや

フォードvsフェラーリのあやのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.4
IMAX Laserの視覚的、聴覚的効果が本当に想像を上回る迫力で、かつての映画鑑賞の枠には収められない特別な体験をした気がしました。あっという間の2時間半。これは是非とも巨大スクリーンで観て欲しい作品!

「7000rpmを超えた世界。そこでは機体は重力を失い、肉体だけが残される。そして、残された肉体は時空と空間を越える。7000rpmを超えた先、それは到達した者だけが知る世界。」

“There’s a point at 7,000 RPMs where everything fades: the machine becomes weightless. It disappears. All that’s left, a body moving through space, and time. At 7,000 RPM, that’s where you meet it. That’s where it waits for you.”

米国屈指の自動車メーカーであるフォード・モーターズが24時間耐久レースであるル・マンで王者フェラーリを差し置く無謀な勝利を目指した実話です。

かつてル・マンでのレース優勝経験を持つキャロル・シェルビーと、自動車整備工でギリギリの生活を送りながらレーサーを続けるケン・マイルズが非常に限られた時間の中での自動車の開発とレースへの参加を試みました。

(ネタバレ注意!)
当時ベルトコンベアで量産していた米国の自動車メーカーを代表するフォード。フォード2世になり、その価値も威厳も失われ始めていた頃。ル・マンでの恍惚たる栄光は正に米国メーカーの意地であり、商業的影響なんかに限定されないプライドと感動をもたらしました。

恥ずかしながら自動車メーカーに関する知識はほぼ皆無であるものの、後にも先にもないフォードによる米国初のル・マン優勝が如何に無謀な挑戦であったのか、時速340kmのその瞬間に正に命を預ける者達の決意と熱い想いを堪能しました。

半年が経ってもケンの死を乗り越えられないシェルビーとは反対に、既にその時がいつか来ることを覚悟をしていたかのような家族達。どんなにその自動車への理解を深めようとも、乗りこなしようとも、到底人間が落ち着きを保つことが出来ない世界。「H-A-P-P-Y」を歌うケンの生涯はあまりにも純粋で、幸せで、嘘偽りがありませんでした。
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