おかだ

DUNE/デューン 砂の惑星のおかだのレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
3.7
顔面美しすぎ芸人としてのティモシーシャラメ


ドゥニヴィルヌーヴ監督の待望の新作は、過去にも何度か映像化されたSF古典小説が原作である「DUNE」。
ちなみに、どうやらすこぶる評判の悪いデヴィッドリンチverは当方未見でございます。

まず、ドゥニヴィルヌーヴ監督といえば、哲学的なメッセージを込めた難解かつ過激な物語を描く作品を多く持つ印象で、「複製された男」や「灼熱の魂」といった、とにかく堅苦しくて厄介な映画を作ってきた。
そして近年では、そういった作家性はそのままに「メッセージ」や「ブレードランナー2049」などの薄暗いSF大作に舵を切り始めた。

上に挙げた2作品とも、ドゥニヴィルヌーヴのそういった、何となく頭でっかちで堅っ苦しく如何にも重々しい雰囲気が作品の世界観とよくマッチしており、『SFやりたかったんだなこの人は。』と思わされるに十分な出来でございました。


という訳で、今作DUNEも150分という上映時間から何となく面倒くささは察しつつ鑑賞してまいりました。

あらすじは一旦置いておくとして。
まず何より圧倒的な映像表現の迫力。
砂の一粒一粒までが〜なんていう表現をよく見かけたが、まさにそんな感じ。
これは間違いなくスクリーンで観る価値があると思う。
あと、ティモシーシャラメの顔面が綺麗。

全体的に描写は細かくて、近未来の未知の惑星という縦軸横軸両方を飛び越えた世界観の説明というややこしいハードルは上手く飛び越えられているのではないかと思う。

あらすじ自体も、古典小説の映像化というだけあり、今となっては手垢にまみれた王道の型に沿うので分かりやすくてよい。

尻上がりにゆっくりと盛り上がっていき、あの時代と惑星の世界観もしっかりと刷り込まれてきたところで、第二章への期待を持たせてくれる良い引きだったと思う。

そんなわけで、近未来の宇宙を舞台にした壮大なサーガの導入としては申し分なしの出来栄えであったと思う。


しかし逆に、一つの映画作品としての是非を問われると少し厳しい。

そもそも先に述べたシンプルなSF劇の序章にしては、この150分はあまりにも長すぎる。

物語の進み方が著しく鈍重で、特に執拗に挿し込まれたゼンデイヤ絡みのインサートのくどさには目眩がした。

あとこれはあくまで個人的な感想だが、相関図や物語は比較的シンプルな割に、登場する固有名詞がどれも死ぬほど覚えづらい。
『ハルコンネン家』以外の固有名詞がほとんど入ってこなかったのがしんどい。

もちろん惑星の描写や砂虫の迫力は圧巻だが、全体を通して娯楽作品としてあまりにも盛り上がりに欠けるところがあり、今回ばかりは冒頭で述べたドゥニヴィルヌーヴ監督独特の堅苦しさが裏目に出た映画だったように思える。

かように、やはりというか何というか、あらすじと構成からみる「スターウォーズ」との類似性(DUNE原作が先発なので逆だが)の割に、スターウォーズのような気軽さが微塵も無く、あらすじに惹かれてブロックバスター的大作を期待した層には少々辛い体験となったのではなかろうか。


とにかく、ようやく盛り上がり始めたところで切れたので続編に期待するとして、まずは続編が製作されるように今作のヒットを祈願するばかり。
間違いなくオススメです。

あとちなみに、ドゥニヴィルヌーヴ監督で一番好きな映画は「ボーダーライン」です。
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