ゴストジシネマ

システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたいのゴストジシネマのレビュー・感想・評価

4.0
明日2021/11/19 に日本のドイツ映画祭で上映されるとのことでレビュー。
まず、どの役者も本当にその職種、人物にマッチしていて演技が上手い。とくに、ベニー役の子は本当に子役なのか? と思うほど難しい役を違和感なく演じている。

社会福祉関連の悲惨なニュースを耳にする昨今、日本人であればドイツの支援・福祉システムはここまで手厚いのかと感心するのは間違いない。システムはもちろん、そのシステムに関わる大人たち一人ひとりもプロとして(一部プライベートと仕事の葛藤がありそこも見どころ)、人として素晴らしい人たちばかりだ。
障害や病気、トラウマといったハンデを抱えたテーマでは"システム"(支援)側の至らなさや欠陥などに焦点を当てられることが多いと思うがこの映画は違う。システムも関わる人もほぼ完ぺきなのだ、こういった点で他の映画とは一線を画している。
だからこそ、主人公のベニー含め、明確な"悪"や"原因"が映画を見ていても見つからず(強いて言えば作中にはでてこないペニーの父親か)、これでもかと期待を裏切られていくので非常に見ていて辛いし苦しい。とくに、アイススケートリング上でのシーンは映画館で思わず声を出してリアクションをしてしまった。

決して笑えたり泣けたりする一般的な"面白い"映画ではないが、見たからには一生忘れられない映画になると思う。恵まれない、不運な他者への想像力が欠けているように見える日本でこそ様々な人に見て欲しい映画だ。
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