黄昏特急

アポロ 11 完全版の黄昏特急のネタバレレビュー・内容・結末

アポロ 11 完全版(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【2019年7月28日(日)に、109シネマズ名古屋において鑑賞】

まず、映画の冒頭、アポロ11号を搭載したサターンⅤ型ロケットを載せた移動式発射台が、消防車などが並走する中、移動運搬用のクローラートランスポーターによって39発射施設の発射定点に向かって、低速度ながらも進んでいくシーンから、米ソ冷戦の副産物として生まれたものを開発するアメリカの国力の物凄さに圧巻されました。


驚いたのは、打ち上げ当日(1969年7月16日)の朝、アポロ11号に搭乗する3人の宇宙飛行士(ニール・アームストロング船長、バズ・オルドリン飛行士、マイク・コリンズ飛行士)が乗車した車両が発射台に向かっている途中に、第3段ロケット(S-ⅣB)の燃料タンクで燃料漏れが見つかり、修理を優先してカウントダウンの中止=発射の延期も検討される中、最終的には3人の宇宙飛行士が宇宙船に搭乗したため、打ち上げまでのカウントダウンを続行したままで第3段の燃料タンクの修理を行ない、最終的には発射の1時間前に修理を完了させて、燃料漏れがなくなったことを確認できた→予定通りの時刻に発射することができたという事実です。


そして、発射シーンの映像は、近年になってアメリカ国立公文書記録管理局(NARA)とNASAによって発掘された、70mmフィルムで撮影された高画質な映像も含めて、今まで見たアポロ計画のドキュメンタリー作品やドラマ作品(テレビ作品、劇場用映画作品)でのアポロ11号の発射シーンの映像よりも、迫力満点でした。


また、動力降下による月着陸船「イーグル」の月面着陸の模様の実際の記録映像は、今回、初めて、母船(司令・機械船)「コロンビア」とのドッキング解除(切り離し)から動力降下開始、そして、月面着陸までのフルバージョンで取り上げられました。
当初の予定よりも早く降下してしまった上に、そこへ「アラーム1202」と「アラーム1201」の警報が相次いで鳴った時の月着陸船の2人の宇宙飛行士(アームストロング船長、オルドリン飛行士)と、ジーン・クランツ氏をはじめとするヒューストンの有人宇宙船飛行管制センタ-の管制官たちの交信のやり取りのシーンもありましたが、緊迫した事態の中、最終的に、「コンピューターのデータのオーバーフローが原因なので問題はない。着陸は続行だ」と管制官たちが指令を下した後、降下用の燃料か残り少なくなった中、最終的にアームストロング船長が月着陸船を手動で操縦して、静かの海の平らな場所に無事に着陸させたシーンは、映画『ファースト・マン』よりも感動的でした。


何よりも圧巻なのは、月面着陸後の月面での活動(その中には、当時のニクソン大統領との電話による会談もありました。ちなみに、ニクソン大統領は、アポロ11号が地球に帰還してハワイ沖の太平洋上に着水した1969年7月24日の当日にも、回収艦であるエセックス級空母の近代化改装型の対潜空母「ホーネット」【CVS-12】の格納庫甲板において、移動式の隔離施設の窓ガラス越しに、移動式の隔離施設に収容された3人の宇宙飛行士と対面しています)の模様よりも、月面活動を終えた2人が月着陸船「イーグル」(の上昇段)で月周回軌道に戻り、1人で留守をしていたコリンズ飛行士が乗る母船「コロンビア」とランデブー&再ドッキングする過程のシーンですが、双方から撮影された再接近→ランデブー→再ドッキングの映像を画面分割映像で描いていたのと、コリンズ飛行士が、「アームストロング船長らの月面着陸の映像を見なかったのはお前ぐらいだぞ。さぞ、孤独だったであろう」という地球上の管制官たちによる問いかけに対し、「全てのアメリカ国民の存在があったので、月の周回軌道を飛行中の『コロンビア』に1人で留守番していた時も、孤独感はなかった」と返答したシーン、そして、再ドッキング後の交信で、「再び3人が一緒になり、全員で地球に戻ることができる」と喜ぶシーンが特に印象に残りました。


さらに、アポロ11号からの最後のテレビ生中継放送の中で、アームストロング船長が、「アポロ計画に携わった全てのアメリカ人、人類初の有人月面着陸という偉業を見守ってくれた世界中の(数億人の)全ての人々に感謝します」とスピーチするシーンの映像もありましたが、このスピーチから、アポロ11号の月面着陸の偉業は、アメリカ国民だけでなく、全世界からも注目されていたことが伺えました。

ちなみに、大勢のアメリカ国民や世界各国からアメリカに来た大勢の人々が、ケネディ宇宙センターの広大な敷地内や周辺の海岸などに集まってアポロ11号の打ち上げを見守るところを映し出した映像には、日本製(オリンパス製?)のカメラを持った、日本人と思しき男性の姿も写っていました。


エンドクレジットのバックでは、アポロ宇宙船の組み立ての工程途中を撮影した映像や、地球帰還後の数週間の隔離生活から解放された後、全米各地や世界各地を周って凱旋パレードを行ない、英雄として歓迎された3人の宇宙飛行士と、彼らを迎え入れた人々の熱狂ぶりの映像もインサートされていました。



何はともあれ、現代の映像デジタル補正技術によって、50年前に人類が達成した偉業の実際の記録映像の数々が、最近の映像のような鮮明な4Kの高画質映像となり、ドキュメンタリー映画として公開されましたが、名古屋に遠征してまで、本作品を見に行った甲斐がありました。
本作品は、人類史に残る世界映像遺産的な記録映像として、後世の人類に伝え、残していくべき史上最高のドキュメンタリー映画だと思います。



※2019年10月12日(土)~25日(金)までの2週間、福井市の福井メトロ劇場でも上映されることが決定したので、同劇場での上映期間中に、福井市まで出かけて、もう一度、このドキュメンタリー映画作品を見ることにしようと思っています。
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