ぱんでみっく太郎

ナイル殺人事件のぱんでみっく太郎のレビュー・感想・評価

ナイル殺人事件(2022年製作の映画)
3.3
 アガサ・クリスティの「ナイルに死す」を原作とした今作は、ブラナー版のポワロ第二作目になる。 ポワロの実写化は何度かあるが、中でも有名なのはデヴィッド・スーシェを主役に据えた「名探偵ポワロ」ドラマシリーズであろう。


 さて今作は事前にスーシェ版を視聴した状態で鑑賞すると「誰!?誰!?今のは誰!?待ってあの人とあの人の設定キメラがいる! 誰!?」という具合に混乱して本編どころではなくなるので、へんに予習をしないで見ることをお勧めする。 むしろ観るべきは前作・ケネス・ブラナー版「オリエント急行殺人事件」である。
 オリエント急行からは共に事件解決に尽力したブークが今作の旅にも同行している。 彼の明るく愛嬌のある人柄は今作でも発揮されており、鑑賞者のハートを見事撃ち抜くことだろう。


 ブラナー版のポワロは相変わらず愛嬌のある卵型のキュートなベルギー人というよりかは「強そう」「過去の傷が今でも癒えてない」「少年漫画における作者のお気に入りキャラみたいな境遇」「明るく振る舞っているまぢ病みおぢさん」という具合だが、新しいポワロ像としてこれはこれでアリだなと感じさせられた。


 スーシェ版の「ナイル」は個人的にちょっと『面白い』の方に比重がいっている気がするが(ドラマのジャクリーン面白すぎません?)、ブラナー版は各キャラクターの立ち位置や心理描写をじっくり書くことで『ドラマ』の部分が強く出ている気がする。
 死体発見演出もホラーじみたものがあったり、演出面は結構面白い。
 ただ結末に関してはスーシェの方が総絶だったなと思ってしまう。 今作の方が現実味があるのこは理解しているがあの最後の数秒にまで油断できない展開には圧倒された。


 結局スーシェ版の話ばかりしていた気がしなくもないが、今作もかなり楽しめるので何卒新しいポワロをよろしくお願いします。