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いつくしみふかきのmaiのレビュー・感想・評価

いつくしみふかき(2019年製作の映画)
3.6
多分制作者側も賭けに似た演出だと認識してはいると思うけれど、シリアスなテーマに乗っかるコメディ要素がわたしには刺さりませんでした…。
初めの「村」というカルト映画にも通じるような演出のまま、その独特な重厚さのまま進んで欲しかったなぁというのが本音です。
顔芸じゃん!と突っ込みたくなるくらいに、みんな凄い表情で、カルト映画的な雰囲気を感じました。そして、シンイチが村を出るシーンの異世界感。雰囲気ひっくるめて好きでした。
ただ都会・教会パートに移ると一転してコメディ要素が印象的になります。
たしかにシリアス感が程よく抜けて面白くはあるんですけど、違和感を感じさせるような重厚さのまま突き進んでくれた方が好みだったなぁと思いました。でも、シリアスにコメディを混ぜると賛否分かれるって思いつつの制作者側の演出だと思うので、こういう演出もありっちゃありなんだと思います。安っぽく感じて苦手だなと思う人も一定数いるでしょうし、逆にその抜けた感じが好きって人も一定数いるでしょうし。どっちの人に合わせるかの問題ですよね。

テーマはキリスト教的だと感じました。
親と子は突き詰めれば他人同士だと言われますが、やっぱり血の繋がりとは自分のルーツでもあるし、自分からは一生切り離すことのできないものです。だからこそ、なんて最悪な奴なんだと父親を軽蔑しつつも、シンイチはそこに「父親」的役割を期待してしまうんですよね。なんて言うんでしょう…渡辺いっけい演じる父親の人間性に惹かれるわけではなく、父親という存在そのものに特別な思いを抱えていて、この人とだから最終的に親子になれたというよりも「血が繋がってるから」親子になれたの意味合いの方が強い気がして…。自分の人生をかなり狂わせた要素でもある父親を、許す・許さない超えて受容したシンイチの人間性の成長がメインのように感じました。そう考えると、一緒にお風呂に入るという親子の象徴的なシーンは、シンイチの寛大性を示したシーンでもあるように思います。

自分の中ではあまり評価は上がらなかったのですが、役者の方々の演技は最高です。そして、端役が豪華。笑
日本でキリスト教を扱った映画って珍しいですし、その中に日本的な要素も加えられてて面白いストーリー構成なのも事実です。一見の価値ありだと思います。
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