MotokiA

ミッドサマーのMotokiAのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.0
■ミッドサマー 2022/06/12

ふんわりと評判は聞いていて、とはいえあの綺麗な感じのメインビジュアルとかからして、徐々に不穏な雰囲気になっていく感じかと思ったら、冒頭からかなり不穏な滑り出しだった…

終始、自然や衣装、装飾がとにかく美しい。そういう映像美観点では繰り返し観たいものの、ストーリー的になかなかカジュアルに見返すのがしんどい作品。
表面上の映像美と対照的に、登場人物たちの意図や内面は混沌とした表情をみせていく。とにかくそのコントラストは意識的に強烈に描かれている。

主人公のダニーに降りかかる不幸、大切な人を失い繰り返し不安や恐怖が襲ってくる。
精神的に不安定なダニーを裏では疎ましく思っている彼氏とその友人たち。
頼りたい人も頼れない、彼女にとって世界は不安に満たされている。

ペレの故郷の集落に到着し、来訪者たちがそのコミュニティの異常さに気づくまではそこまで時間がかからない。彼らはそれぞれ違った反応を見せていく。

生命を終える儀式の衝撃に取り乱し、その異常さを訴えるカップル。
常識的な反応だが、冷静に対応する村人たちとの対比で、この土地では彼らが異物であるということを印象付けているようでもあった。

一方ダニーとその友人たちはその異常性に戸惑いながらも、各々抑えられない好奇心の芽が開いていく。
観客としても非日常の異常なコミュニティがベースになり異常性に慣れていくことで「異常さ」の境界が徐々に曖昧になっていく。
好奇心に負け禁忌を侵すジョシュ、腹黒い外道のクリスチャン、無神経なマーク、日常の側にいる人間の異常性が際立ってくる。

一方、これまでの日常にいつも居場所がなかったダニーにとって、この「異常な」世界で受け入れてもらえること、役割を与えてもらえること、大事だと思ってもらえることで、心の安寧を回復していく。
常に不安に苛まれ、周りの人からも腫れ物に触るような扱いを受けていた彼女にとってそれは救いになった。
容易に正しいか誤っているかということができない幸福の描かれ方だった。

この作品は「異常な」世界を舞台にすることで、いわゆる「普通」から疎外され孤独に苛まれる人の存在や、そうやって爪弾きにされた人たちがすがる危うい世界、そしてそういった孤独な人を見ないふりをしたり邪魔者扱いする「普通の世界」の人々といったものへの警鐘のようにも思えた。
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