MasaichiYaguchi

この街と私のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

この街と私(2019年製作の映画)
3.9
本作は舞台となった土地の地域活性化を目的とした「地域発信型映画」として製作された作品で、映画「男はつらいよ」の舞台としても有名な「柴又」がある東京都葛飾区が取り上げられている。
この作品のヒロインである、テレビ番組の制作会社で働く村田美希は、お笑い番組を作りたいと思って業界に入ったが、今は深夜に街の良さを紹介する関東ローカル番組「この街と私」のADとして休みのない日々を送っている。
或る日、「この街と私」の街頭インタビューを初めて一人で任せられた美希だったが、撮ってきた素材をディレクターに「使えない」と言われてしまい、落ち込んでしまう。
本作は監督・脚本を手がけた永井和男さんの実体験が基になっているとのことだが、若者が抱く理想と現実の乖離に懊悩する様がリアルに伝わってきて共感してしまう。
舞台となっている葛飾区は、会社の同僚が住んでいたり、「男はつらいよ」のファンの一人として、柴又帝釈天や寅さん記念館、山田洋次ミュージアムに行ったりしているので馴染み深く、親近感を覚えてしまう。
葛藤の末、ADの仕事と葛飾という街に再び向き合うことにした美希は、そこに何を見出していくのか?
この作品は、テレビ番組ADとして奮闘する主人公の成長と葛藤を描いているが、コロナ禍の社会で喘いでいる多くの若者に美希の姿を通してエールを送っているような気がする。