ESR

フェアウェルのESRのレビュー・感想・評価

フェアウェル(2019年製作の映画)
3.9
幼い頃に両親と中国からアメリカに移住した移民二世である主人公ビリー。中国に住む祖母ナイナイがステージ4の肺ガンであると発覚するが、本人には最期まで告知しないという。各地に住む一家は、余命宣告されたことを悟られないよう従兄弟の結婚式という"嘘"を口実に祖母の元を訪れる。

"優しい嘘から生まれた感動実話"という触れ込みから、エモーショナルで映画的な山場のある作品かと身構えていたが、『フェアウェル』で繰り広げられるのは、家族の他愛のない(時にシリアスで時にお節介な)会話だ。彼らの言動の端々から哀しみが滲み出る。
如何にもアジアの家族っぽい会話に共感しながら、また時折自分の家族と置き換えながらしみじみと観ていた。

作中、"東洋と西洋"という言い方をされるが、両者の価値観の違いや、ビリーの移民ゆえのアイデンティティの問題にもフォーカスされる。
どのように生きて、どこを居場所とするか、というのは(移民に限らず)全ての人に共通する問いだろう。

もう二度と会えないことを知りながら別れる時の気持ちはどのようなものなのだろうか。
ESR

ESR