けべん

TENET テネットのけべんのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.7
話の内容が複雑だけど、めちゃくちゃおもしろかった。話を読み解くのも面白いし、最後の作戦は他のSF作品で観たことない戦い方でワクワクした。さまざまなビッグタイトルのロードショーがコロナ禍で延期される中、その沈黙を打ち破った作品として話題を呼んだ。

タイトル『テネット(Tenet)』は (個人や集団が信奉する)”主義”のこと。流儀だったり信念だったりとも取れる。主人公と仲間たちの一番の目的は、第三次大戦と称した未来からの攻撃を防ぐことだった。
作品のジャンルはSFで、特にタイムサスペンスというタイプ。この作品が難しいとされるのは、時系列が整理できてないとどこの時点について言及してるかわからなくなるところだろう。

この作品は、話の難しさを除いても発想がかなり面白い。
まず、”謎解きの方法”。黒幕が誰か?を探っていく話になるが、かなり限られた少ない情報から蔦を辿るように物語の展開を見せる。これを演繹法の思考で導き出していた。犯人探しを推理していくにしては高度なやり方で面白い。
あと、最も重要な要素になってたのが”逆行”。これは、エントロピーの減少で逆再生に見えることと定義していて、将来的にあり得るかもなと変に納得した。時間軸はそのままという条件があっての面白さになってた。
まだまだ面白いところはあるが、逆行した時間軸を進むときの制約や確認することも面白い。時間を戻して普通に行動できるのも変だな、という長年の疑問に一つの解をもたらしたアイデアだと思う。たしかに空気は普通に吸えないだろうし、まっすぐ普通に歩けないだろう。おそらく。

物語を複雑にしてたのは、登場人物の多さ、回転扉で時空を簡単に行き来できてしまったこと、登場人物の過去と未来が同時時間帯に存在すること、逆行の原理となるエントロピーの存在だと思う。
個人的には、人の逆行は物語を複雑にすることが多いので、モノのみに絞って表現できたら面白かったかもなとも感じた。回転扉の原理がイマイチよくわからなかったのもその一因。

とにかくワクワクさせてくれる作品。パズルのように物語を紐解いていき、150分はあっという間にすぎてしまう。理系教材が好きなら間違いなくハマる。
※一つ言えるのは、冒頭の薬莢と壁のシーンで、分析官の説明がピンとこないと以降の話もピンとこないと思われる。