GODZILLASAURUS

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのGODZILLASAURUSのレビュー・感想・評価

3.5
「中盤が残念なのが惜しい」

ネタバレあり


序盤から重い雰囲気が漂い、ミステリーとして良い感じのスタート。
誰が翻訳原本をネットに流出させ、編集社社長を脅迫してるのかという謎解きの物語が始まる。
9人の翻訳家が地下室に閉じ込められて、とにかく一日中仕事をさせられる。彼らの名前はほとんど世に出ず、編集社がボロ儲けという業界の闇が露呈する。

地下室での密室劇的なことを期待したが、終盤まで謎解きが進まず、誰が犯人なのかのヒントもあまり出ないので、正直観ていて面白味を感じにくい。
この辺りに、犯人(たち)に繋がるヒントや布石、伏線がもう少しあれば盛り上がる中盤になった気もする。

後半に差し掛かると主犯格のアレックスから出版社オーナーのアングストロームへ今回の事件が語られる。ここで一気に誰が犯人グループなのかわかるので、密室劇にも楽しみが出る。翻訳の仕事を頑張るが、自分たちが評価されないことに対する不満が募った翻訳家たちの逆襲という犯行の動機が見えてくる。
そしてラストに主犯のアレックスが原作者であることが明かされ、アングストロームによる翻訳家への仕打ちへの復讐に加えて、アレックスが尊敬していた本屋ので店主のじいさん(この人が原作者だという体で物語は進んでいた)がアングストロームに殺されており、その復讐劇でもあったことが明らかとなる。
このラストのアレックスの語りが非常に良く、淡々としながらも非常に強い怒りに満ちたもので惹き込まれた。

終盤からラストの謎が明らかになっていくところは面白かったが、序盤のいい雰囲気を上手く生かしてきれず、ラストへのつながりも薄めの中盤の影響で、いまいち乗り切れない作品だった。惜しい。星3.5
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