クロスケ

郊外の鳥たちのクロスケのレビュー・感想・評価

郊外の鳥たち(2018年製作の映画)
4.0
映画を観終わった後にわかったことですが、上映時間が113分と、2時間にも満たないことが少し意外でした。体感としては2時間を超えている気がしたのです。

ただ、それは退屈が理由で時間が長く感じられたからではなく、映画の中で流れている時間があまりにも心地良くて、いい加減そろそろ終わった方がいいんじゃないかと心配になったからです。喫茶店で居心地良すぎて長居してしまう感覚に近いかもしれません。

カメラのズームワークはホン・サンスの影響を強く感じますし、現実と夢幻の区別のつかない独特の浮遊感はアピチャッポンを彷彿とさせます。なるほど、少年少女の囁かな冒険は確かに『スタンド・バイ・ミー』のようですが、(線路の上を歩くシーンすらある)私などはキアロスタミの『友だちのうちはどこ?』を思い出してしまいました。

何処か空洞を思わせる現代中国の街の風景。測量器や双眼鏡のレンズを通過する主人公たちの眼差し。友達の家に向かう冒険の途中で、一人、また一人と姿を消していく仲間たち。豊かな音響の数々。(鳥のさえずり、トンネルの水の音、遠くに聞こえる建設現場の低い音などなど。)

印象的なシーンは枚挙にいとまがないですが、ここではただひとつ、高架を走る列車から洩れる光がキツネと呼ばれる少女の顔を鮮烈に照らすショットが素晴らしかったとだけ言っておくことにします。

日本映画も濱口竜介、三宅唱、深田晃司、真利子哲也らの台頭が目覚ましいですが、中国も本作のチウ・ションやビー・ガンなどジャ・ジャンクー以降の才能が出てきて今後が楽しみです。(その一角だったフー・ボーの夭折は惜しいですが。)
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