キイロ

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のキイロのレビュー・感想・評価

-
グランド・ブタペスト・ホテルしか見たことない、ウェス・アンダーソンの新作。
創刊者が亡くなり、最終号となった雑誌に載るエッセイをオムニバス形式で描く。
文字を映像で追体験するような感覚で、こんなエッセイが自分にも書けたら、と思うような珠玉の作品。もちろん美しくウェットに富んだアーティスティックな映像も眼福なのだが、見終わったあと心が暖かくなって涙があふれそうになるくらいによいストーリーだった。
監督から映画へのラブレターみたいな言い方をするけど、本当にそんな感じ。
以下ネタバレあり
















自転車記者のオーウェン・ウィルソン、アートのティルダ・スウィントン、政治/闘争のフランシス・マクドーマンド、事件のジェフリー・ライトと、各々の視点から紡がれるエッセイはまさに一冊の雑誌。どのエッセイが好き?と語り合えるような多彩さで全く飽きさせない。
公開前から出演する俳優の豪華さが話題となっていたが、マジでえげつない。名優たちの共演という視点だけで見ても楽しい。
演劇のような映像(まじで演劇そのままのシーンもあった)も当然のことながら、おしゃれでコミカルで芸術的で素晴らしい。
所々我々異邦人にもわかるような笑いもある。と
一方、メディアに身を置く立場からすると、こんな記者いるよな、っていうところも感じられて感情移入しまくりでもあった。
創刊者役を務めるビル・マーレイはあくまでつなぎ役なのだが、多くを語らず意図を伝えろとのみ言うだけで人となりが伝わってくる演技と脚本には舌を巻くし、ラストの最終号をどうするかみんなが話し出す瞬間はとってもぐっときた。
古典へのオマージュが数多く散りばめられているはずだが、そこはよくわからないけど、語りまくりたい夢のような映画!
キイロ

キイロ