エマ

燃ゆる女の肖像のエマのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.0
《なぜ燃ゆる瞬間を描いたのか》
※ネタバレ、個人的見解を含みます。

この時代に生きた女性はエロイーズのような人も多かったのかもしれない。

衣装や舞台のクオリティがものすごく高い、惹き込まれる。

結局エロイーズが初めてキスをしたいと思ったのはいつだったのか。連絡も取れない時代に生まれた主人公達と同様に、それを知ることは私たちも出来ないのだ。

★そして、主人公はなぜエロイーズの燃ゆる瞬間を描いたのか。
個人的見解ではあるが、劇中で「貴方を捉えられない、出てきても直ぐに消えてしまうから」といったような言葉が出てきた。
これは、二人の関係性自体を示す大きな軸となっていると考えられる。
2週間も経たぬうちに別れなければならない2人。結ばれることが許されない2人。二人の関係性が消えてしまうのは時間の問題だった。
それが、「炎」に繋がってくる。実際、エロイーズが気に入らずに顔を削った(?)絵を燃やすシーンや、焚き火でドレスが燃えるシーン、そしてやけに蝋燭に火をつけたり暖炉をつけるシーンが多く見られる。

この時代に電気が無いというのもあるが、炎の不可逆性や刹那感をこの時代の人間自体に投影して描いていると考えられる。

なので主人公にとっての一瞬で戻れない愛おしい時間は、炎のようなものであり、燃えて形を変えて(関係性)どこかへ行ってしまったエロイーズを炎と共に描きたかったのではないだろうか。割と近くにいたはずのエロイーズを遠くに描いているのも辻褄が合う気がした。

作品全体を通して曲がほとんど使われていないため、キャンプでの歌と最後の曲、主人公が弾いた曲がとても映えている。この時代の不充実感がそこにも描かれていると感じた。
エマ

エマ