スベン

レ・ミゼラブルのスベンのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.0
パリ郊外のモンフェルメイユに移動になった警官の悪夢のような初日。
人種や宗教が混じり合う地区と団地は雑然としていて、ドキュメンタリーのように生々しい。エッフェル塔が映らなくても、違う世界を見ているようでも、間違いなくここはフランスのパリ。
自業自得なのか、負の連鎖故なのか。
何がどうしていたら、正しい行動だったのかさえも分からない。それでもイマーム(イスラム教指導者)然としたサラーの「それでも怒りは避けられない」という言葉が、今に始まった事ではない怒りと反発の根深さを物語っている。

ラスト15分の怒りと憎しみ。そして報復、復讐、反撃。怒涛の勢いで訴えかけてくる。ポスターの「この街は今も燃えている」があまりにも的確すぎる。
しかし何に対しての明確な怒りなのか。きっと社会全ての、あらゆることに対しての彼らの怒りなのだと思う。
そしてあのラストには鳥肌が立った。
ビクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」の一節があまりにも重い。強烈に残る。本作の、そして今のフランス社会をまさに表している皮肉。
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